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モフモフの名前
「ねぇ。名前を教えてくれる?」
「アサヒだよ。名字もなにもない。」
「アサヒね。」
「まさか、名前も知らなかったの?」
「ええ、珍しい動物しかいない国だってきいてたのよ。人がいるのも知らなかったくらいよ。」
私はこの国で人間に接触するとは思っていなかったし、王子と結婚なんてしなくていいと思ってたから、何の心構えもない。
ただの人間嫌いの公爵令嬢で、生け贄のように国外へ追い出された女…。可哀想過ぎるでしょう!
「神獣様には会えたりしないの?」
「会えるけど。」
「本当っ!?会いたい!会いに行きたいっ!!」
「ふわふわモフモフしてないよ?」
「そうなの…?」
「ドラゴンだし。ペチペチしてると思う。」
「もうペチペチでもザラザラでもいいから会わせて。」
「…チューしてくれたら頼んでみる。」
チューって…この王子、年はいくつなのよ。
「嫌よ…。しかも頼むだけで、結果は会えないかもしれないじゃない。」
「じゃあ、会えたらいいの?」
「結婚してからしか駄目。」
「結婚はしてくれるんだ。」
「王子相手に私が逃げ出してもお咎めなしなら、さっさと国へ帰るわ。」
「それは無理かな。」
「……」
何よそのニコニコ顔は。
「何で膨れっ面してるの?」
「私は人間が嫌いなの。動物達と仲良く暮らしたかったの。」
「動物と仲良くなるのって、人嫌いと関係ないと思う。こんなに俺と面と向かって話してるんだから、見込みはある。」
「何の?」
「俺を好きになる見込み。」
「私を国に返すという事をしようと思わないの?」
「全然。全く。500%なし。」
何故500%なの…。
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