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モフモフじゃなくペチペチ
陛下と王妃様に大歓迎された。
机の上には山のように料理が並べてある。
「嬉しいわ。この国に嫁いでくれる女性は少ないから。」
「何故ですか…?」
「ここには『獣しかいない』…とか、『裸で暮らしている部族だ』…とか、沢山の噂が立ってしまって、結婚を申し込んでも断られる事が多いの。」
裸…そんなの聞いたら誰も来たがらないよね。でも私は動物や獣ばかりだと聞いて喜んだの。そこから既に踏み外してるのよ。
「私は、珍しい動物しかいないと聞いて…喜んで来たのですが…。」
「きちんと説明してあったんだが、伝わってなかったんだね。」
「そのようですね…。」
そもそも、伝える気が無かったんだと思うのよね。あの両親は…。引きこもりの娘に困ってたし。
「何故この国は色々な噂があるのですか?」
「…この国に入ってこれるのは、この国の住人だけなの。だからだと思うわ。」
王妃様の言う事がいまいち理解できない。
「私は何故入国できたのですか?」
「アサヒが一緒にいたからよ。」
アサヒがいたから…って、どういう事かしら。
「俺、これでも王子だから、入国させる能力があるんだよ。王族だけの力。」
自分で『これでも』って言うくらい、王子に見えないと自覚はあるんだ…。
私を迎えに来たのが1人だからおかしいとは思ったけど、そんなカラクリがあったなんてね。
「この国には沢山動物がいたりしませんか?」
「他の国にどれ程の動物がいるのかわからない以上比べる事は出来ないが、この国の半分は神獣様のものだから、そこには沢山いるかもしれない。」
「っ本当ですかっっ!?」
素晴らしいわ。きっと見た事もない動物達がいるのよ!!
「サラ~、あまり期待しない方がいいよ。」
隣でパンをモグモグ食べながらアサヒが私に言った。
「どうして?」
「神獣ってドラゴンって言ったけど、ちょっと違うから。」
「また嘘をついたの?」
「なんだろ、サラが想像しやすいようにドラゴンっていっただけ。彼に会えばわかるけど、モフモフした動物なんて殆んどいないから。」
彼…?
まさかまた人間なんじゃないでしょうね…。
ペチペチの人間。
普通…。
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