しおりのお仕事

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しおりのお仕事

「僕はね、音を聞くのが好きなんだ」 「音ですか」 「そう、お腹を壊している女の子がトイレに入ってる時の音とか」 「ああ、そういう」 「しおりちゃんは、するのを見られるのが好きなの?」 「…やだ、恥ずかしいこと、聞かないで」 「うふふふふふ、ごめん、ごめん」 音、そうか音。 思いっきり下していれば良いのだが。 とりあえず気張ってみた。 んーっと声も出してみた。 お客さんが今にも手を叩きそうなくらいはしゃいで膝を揺らした。 目をぎゅっと閉じて、何度も何度も腹筋に力を込めて、両腕でお腹を抱えてぐいぐいと上から下へと流すように動かした。 そして、お客さんの願いは無事に叶うこととなる。 しおりはこの日、立派に「M嬢」としての働きをしてみせた。 と、まあ、そう思いたい。 その間、お客さんは、自分の着ているスーツを乱すようなことは一切しなかった。 そんな、しおりにとっては不思議なことだらけだった120分が、ようやっと、もうすぐ終わる。 無事にお客さんの望んでいた「プレイ内容」が終了した後、まずショーツが汚れていなかったことに安堵した。 オムツを履くにはまだ70年ほど早い、と思いたい。 プレイに使われた器官を何度もトイレットペーパーで拭いて、それを水洗トイレの中へと捨てる。 二度ほどジャーっと流して、トイレの中も汚れていないか確認した。 「中は、見なくても良かったんですか?」 「僕は、音が好きなんだ」 「それと、見てるのが好きなんですよね」 「そう、しおりちゃんと同じ、しおりちゃんは見られるのが好きだから」 「同じですね」 「そう!同じなんだ」 お客さんはとても嬉しそうに、今にも飛び上がりそうなほど、大袈裟にそう言って、しおりに笑いかける。 もう、この出目金のような顔を、しおりはキッショイとは思わなくなっていた。 可愛い人だな、と思っていた。 ショーツをあげて、トイレを出ると、お客さんは立ち上がって洗面台の水を出してくれる。 手がグリセリンで汚れていたので、ありがとうございます、と言って備え付けられていた石鹸できちんと洗った。
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