弱いあなたに恋をする

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……実はこの裏通り、空手道場への近道なんだよね。 今日は稽古に遅れそうだったからさ…。 仕事で、ちょっと残業しちゃったのよ。 多少稽古に遅れても怒られはしないけど、貴重な稽古の時間が削られるの、私が嫌なの。 夕方の十八時ちょっと前。 本当に、普段は通らないけど、今日は仕方なく裏道へ…… そうしたら、彼が襲われてるところに出くわして。 自分の運が悪いと思う反面、人として見知らぬフリできないでしょ? ……そういうわけで、私はガラの悪そうな男ども三人を、瞬殺でノックアウトさせたのです。 黒帯三段、なめるなよ。 ……そして冒頭の会話に戻るというワケ。 「空手を習うには、どうしたらいいですか!?」 ……本当に習う気なのかな? 見た感じ、私と歳は近そう。 二十代半ばといったところかな。 ひょろりとしてて、虚弱体質なんじゃないかと思ってしまう。 ……稽古、それなりにハードなんだけど…… この人、ちゃんと通える? 大丈夫かな? 「あの……、今から道場に行くから……、一緒に行く?」 不安はあるけれど、そんな不安を本人には言えず。 彼へそう声をかけると、嬉しそうに大きく頷いた。 道場への道すがら、怪我の有無を確認すると…… 「ところどころ痛いけど、手も足も動くし、大したことないです!それより、名前、なんていうんですか?」 明るく名前を聞かれたので、「木村美穂(みほ)よ。」と隠すことなく自己紹介。 「マジでっ!苗字一緒です!俺、木村優人(ゆうと)って言います!……えっと…、お互い木村で、『木村さん』じゃ変だから、………美穂さんって呼んでいいですか?」 身長百七十センチある私よりほんの数センチ高い位置にある彼の顔。 驚いたり、嬉しそうな顔したり。 今は照れてるような……はにかんでる顔。 まるで大きな子供みたい。 「ふふっ。いいわよ。優人くん。」 私の返答に、彼…優人くんは心から嬉しそうな笑顔を浮かべたのだった。
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