弱いあなたに恋をする

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……まさか、本当に習い始めるとは…… 道場に連れて行ったその日のうちに入会手続きを済ませ、火木土、夕方十八時から二十時半までの稽古もきっちり休まず。 才能があったのか、ヤル気に満ち溢れているためなのか。 こちらが驚いてしまうスピードで、優人くんはメキメキと上達していった。 そして、ことあるごとに『美穂さん!』『美穂さん!』と私の側へやってくるものだから…… 尻尾をブンブン振ってるわんこのように見えて、ついついかまってしまう。 こんな調子で、先日、たまたま年齢の話をした時に、二十五歳という同い年であることが発覚。 歳が近いだろうとは思っていたけど、まさか同じとは……。 勝手に年下と思ってましたよ。 そんな優人くんに、ある日の稽古終わりに食事に誘われ、気軽に入れる大手牛丼チェーン店へ。 楽しく食事をしたのをきっかけに、いつの間にか稽古終わりにそこへ行くことが習慣となって。 稽古して、ご飯を食べ、世間話をして。 気がつくと、優人くんが道場に通い始め早くも半年。 最近は牛丼とは別に土曜の稽古の後、軽く居酒屋で一杯引っかけて帰るのがいつもの流れに。 今日も稽古の後、『いつもの店行こっか。』と声をかけると、『はいっ!行きましょう!』と二人で並んで道場を出て。 道場の近くにある、これまた全国チェーンの某居酒屋。 店員に案内されたのは、半個室的な掘りごたつの席。 ……実は、私も優人くんも、お酒はめっぽう弱い。 「私、いつもの梅サワー。優人くんも、いつものレモンサワー?」 「うん。そうする。」 お酒はいつもこの一杯だけ。 これで十分ホロ酔える。 タブレットで定番の唐揚げやサラダをちゃちゃっと注文し、他愛のない会話をたらたら。 最近、優人くんと過ごすこの時間が、私にとって、とてもかけがえのない大切なものになっている。 波長が合うというのかな…? すごく居心地がいいんだよね。
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