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ふと目に入った腕まくりをした優人くんの腕。
……あれ?
こんなに筋肉のついたしっかりした腕してたっけ?
出会ったときは『筋肉ついてる?』って聞きたくなるようなヒョロヒョロだったのに……。
前腕から上腕、肩へ視線を移し……
……うん、絶対筋肉ついた。
服を着ているからわかりにくいが、出会ったときより腕周り、肩周りのボリュームが増している。
「……もう、ヒョロヒョロじゃないじゃん。」
つい口に出してしまった。
「は?ひょろひょろ?」
きょとんと不思議そうな顔をしている。
「ううん。こっちの話。」
パタパタと手を振って話題を終わらせようとしたけれど、「俺に言えないようなことですか?教えてくださいよ。」なんて言葉を返してくる。
「別に言ってもいいけど……、傷つかないでよ?」
言えないことじゃないけど、ヒョロヒョロなんていい言葉じゃないもの。
先に予防線を張っておく。
「傷つく?……余計気になるな……。何考えてる?」
レモンサワーをチビリと口にし、真っ直ぐな目を私へ向けてくる優人くん。
「……半年前、初めてあった日ね、私、優人くんのことヒョロヒョロの虚弱体質みたいな人だなって思ったの。……なかなか失礼でしょ?」
「……ヒョロヒョロの虚弱体質……」
「空手の稽古、けっこうハードだけど、ついてこれるのかなって。」
「……そんな風に思われてたんだ……」
……あ。
切なそうな顔。
「でもね、今、腕まくりしてる腕を見て、体つき見て思ったの。しっかり筋肉ついたなって。もうヒョロヒョロなんて言えないなって。」
「…それでさっきヒョロヒョロって……」
「そうそう。心の声、漏れちゃった。……しっかり筋肉ついて、かっこよくなったね。」
にこりと微笑み、素直にそう口にすると、ボンッと音が出そうなくらいの勢いで、優人くんの顔が真っ赤に染まった。
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