51人が本棚に入れています
本棚に追加
……さすがに二十五歳。
『彼氏ができた』『結婚した』『子供ができた』
久しぶりな友人の連絡なんてコレばっか。
「美穂さん、可愛いのに。見る目ない人ばかりだったんだ。」
ジッと私を見ながら口にする優人くん。
「……可愛いなんて……。デカイし、可愛くないし、男より強いし……」
……自分で言ってて悲しくなるよ……。
「美穂さん、デカくないじゃん。俺よりは小さいし、ちゃんとしっかりバッチリ可愛い。」
「………」
お世辞なんて……いらないよ……。
「……確かにその辺の男より強いと思うけど……、俺よりも強いだろうけど……」
ですよね……。
自慢じゃないけど、黒帯三段。
自惚れでも何でもなく、私、強いもん……。
強くなりたくて空手を始めたけど……
女の子としては………ねぇ…。
普通の男の人って、守ってあげたくなるような女の子がいいんでしょ?
………私、そんな女の子じゃないもん………。
「けど、それがどうしたっていうんです?どうってことないでしょ。」
優人くんは、きっぱりどうってことないと言いきった。
「え…?」
……それ、本心?
「まだまだ俺の方が弱いけど、もう少し待って。すぐに追いついて、追い越して、美穂さんより強くなる。強くなって、俺が美穂さんを守るから。美穂さんに見合う男になるから。」
優人くんの言葉に、かぁーっと体温が上がる。
顔がかっかと熱くなる。
『守るから』
『見合う男になる』
そんなこと、初めて言われた。
……私、守ってもらえるの…?
胸がドキン!
突然大きく高鳴った。
「う…、うん…?待ってる…。」
私のぎこちない返事に、優人くんは照れたような、はにかんだ微笑を浮かべた。
なに…?
胸がドキドキと……
この落ち着かない気持ちは……なに?
何か、温かいものが、確実に心の中に芽生えた。
ぽっと芽生えた初めての感情。
この芽生えた感情が、『恋心』だと気づくのは、もう少し彼が強くなってから……。
END
最初のコメントを投稿しよう!