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「あなたのように強くなるには、どうしたらいいですか!?」
ぼろっぼろになっている、ひょろりとした彼。
その目はキラキラと私を真っ直ぐ見つめていた。
普通の一般女性よりも背が高くて、可愛げもない私に、なんちゅうキラキラした目を……
「えっと……、私、空手を嗜んでいるので、空手を習えばいいんじゃない……かと……。」
今いる場所と、真っ直ぐな目をした彼に戸惑いながらも、聞かれたことを馬鹿正直に答えてしまう。
メインの通りから一本外れた裏通り。
その通りにある、控えめだがラグジュアリーな存在感を漂わせる建物。
仄かにライトアップされ、愛し合う者を誘う特別な空間…………ラブホテル。
そんな建物の前。
女性にしては背の高い私と、ボロボロの彼。
視界の端には、私がノシた男が三人道端に転がっている。
こんな状況での、この会話……
戸惑わない人がいたら見てみたい。
………そんな会話をする数分前………
私が出くわすまでに何が起きていたか。
ボロボロの彼によると……
ガラの悪そうな男三人が、女の人を無理矢理ラブホテルに連れ込もうとしていたらしい。
そんな状況をほっとけなかった彼は、男達に声をかけ、なんのかんのあって、その女性を逃したのだけれど……
狙った獲物を逃された、男達の苛立ちの矛先が彼へ向いて。
三人対一人。
多勢に無勢。
彼自身喧嘩が強いわけでも、腕っぷしがあるわけでもないらしく……
……まぁ、そのヒョロヒョロの体で、強くないのは予想できたけど……
ほぼ一方的な男達からの殴る蹴るの暴行を受けていたところ、私が通りかかった………ということのようだ。
うむ。
私が彼達に会うまでの辻褄は合う。
……今日は運の悪い日なのかな……?
普段、ラブホテルがあるから、私はこの道を通らないんだけど、今日はたまたま通った。
たまたまな日に、こんなトラブルに巻き込まれるなんて……。
はぁ……。
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