恋だった

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 どこか懐かしい匂いのする初夏の夜空のもと、人工的な光を放つ自販機の前にしゃがみ込む私を、優大(ゆうだい)は見捨てなかった。  というより、それはもはや一種の義務のようにペットボトルの水を差し出し、いつものように呆れ顔をしていた。 「うえ、飲みすぎた」  力の入らない手で、まるで初めて与えられたおもちゃを扱う子供のようにペットボトルのキャップと葛藤していたら、サクッとそれを取り上げた優大が開けて渡してくれる。 「ありがと」 「ほんと、呆れるよ。調子乗って飲むから」 「だって、ようやく終わって安心したんだもん」  半年がかりの大きなプロジェクトが一段落した今日、部長のおごりで焼肉をごちそうになった。焼肉は焼肉でも、タレをドパドパつけるやつではなく、塩とわさびで上品に食べるやつだ。  高級店でお肉を堪能するかたわら、お酒は飲み足りていなかったらしい後輩の進藤が、焼肉店を出たあと向かいの居酒屋に飛び込んだ。  数週間箱詰め状態で張り詰めていたので、開放感が言い表せないほどで、進藤につられて、気持ちよくお酒が進んだ。
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