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招待状が届いた
5月も終わりに近づき
雨の日が増えた
今日は
傘なんて意味がないくらいに降った
郵便受けに珍しく何か入っている
ダイレクトメールにしては・・・小さく厚みがある
手紙?
この時代手紙とは?
中身を取り出すと
それは
結婚式の招待状だった
・・・・・・俺はそれを
一度、ゴミ箱にほおり込んだ・・・・・・・
あの日から5日
これ(招待状)を毎日、睨みつけている
ゴミ箱に入れては拾いを繰り返し
今、手に持って・・・見ている
結婚式って
一週間をきってから
招待状を送ったりするのか?
常識なさすぎだろ
ま、仕方ない事情は十分に心当たりがあった
これは
何かの嫌がらせか?
断り待ちか?
それとも
悩みに悩んで・・・・・・
【勝手な想像】
二人はテーブルに向き合って座る
一通の招待状を間に置き話を始める
その宛名には
俺の名前
「近況報告・・・的な意味合いも込めて
招待状を送ろうと思う」
男の言葉はいつになくたどたどしく
緊張を表している
女もそれは一緒で
下を向き
しばらく考えて
「近況報告って・・・
こんな風にするのは・・・
どうなのかな?」
俺に対してか?世間体か?
常識的な事を今更、気にし始めているようだ
「いい機会だって思ってる
今まで目を逸らしてきただろ?
でも
いつか
対峙しなきゃいけない事だって
分かってるだろ?
お前だって・・・そう思ってるから
あいつの話をしてしまいそうになる時
躊躇うだろ?」
珍しく
二人は喧嘩腰にも聞こえる話し方になる
それほど
俺は二人にとって困った奴なんだ
「っで、来たらどうするの?」
彼女、そんな言い方するかな?
違うな・・・
「っで、来てしまったら考えはあるの?」
みたいな感じで言うかもな
でも
言おうとする意味は変わらないけど・・・
「来たら・・・どうしよう・・・」
あいつ
そんな風に困るんだろうな
賢いくせに
勢いだけで物事を考える癖があったからな・・・
彼女はしっかりしているから
彼女の前では
そんな風に素直に動揺したりする姿も見せるかな?
「結婚式だからね
ちゃんと考えてよ
ただの飲み会なら
“様子見で・・・”
的なノリでもいいけど
親族だって会社の人も来るんだよ
簡単な考えでそういうのは・・・違うと思う」
一生に一度の結婚式
ケチはつきたくないのは誰もが同じ
特に新婦は・・・
「あっ!分かった
報告はするけど
来れないようにしたらいいじゃん」
あいつ考えすぎたら
たまに少しバカになるからな
簡単にそんなこと言いそう
「どういうこと?」
女は目を大きくして男を見る
そりゃ
そのリアクションになるよな
でも
表面だけの理論的な話口調で
バカな提案を彼女に話し始める
「例えば
結婚式の一週間前に送ったら
向こうだって都合つかないかもしれないし
列席しようとしても
もう最終打ち合わせも終わって席やら何やら間に合わない事くらい
想像つくだろうから
来れないと思う
だから
招待状で俺たちの事を知って
何かリアクションがあるとしたら
結婚式の後になるだろうし・・・どう?」
いつもになく
ペラペラと
ペラペラな話をする
「招待状送っておいて
招待しないって事?」
女は少々困惑する
「・・・だな」
バカな考えな事は分かっている
だから
男は少し落ち込んだような表情で下を向き
小さな声で言う
「それって
すこぶる失礼じゃない?」
まっとうな意見だ
「失礼だな・・・って
そもそも
はなから
色々あってこうなってるわけだし
こじれていることは・・・間違えないわけだから
失礼だなんて
今更な話だろ」
それも
そうだ
妙に納得する女
「今頃どうしてるかな?
あれから会っていないんだから
どんな人間になってるかも分からないのに
こんな刺激するようなやり方したら
少し怖くない?」
少し
いや、けっこう酷い事を口走る女
でも、心底嫌な奴ではないので
後ろめたいのだろう
視線を下に向けた
「怖くない」
顔を上げ
女を見る真っすぐに男
「どうして?」
むきになった表情で
男を睨む女
「まっとうに生きているって・・・信じてる」
バカなくらい素直で
真っすぐな男は
かつての親友(俺)を
こんなに時間がったった信じているのだろう
「まっとうに生きていても
たった一つのこだわりが譲れなくて犯罪に走ってしまう事件
あるよ」
よくあるな
そう言う事も
“そんな人じゃないんですが・・・驚きました”
みたいなニュース・・・俺もよく見る
俺はその
犯人候補か?
「律は・・・犯罪者になるタイプではない」
きっぱり言い切るかつての親友
「自信あるの?」
若干涙目の女
「お前は・・・どう思ってんの?」
その言葉は
女を追い込むようなもので
誠実な男から
そんな風に言われてしまったら
彼女がまるで悪の様に映ってしまって
それは
自分たちの幸せの結婚式の話から広がった話なのに
こんなに悪女にされてしまうような言葉を
真っすぐに言われてしまうなんて・・・くやしい
その気持ちをもろに表情に出す
「・・・長すぎる時間が
彼をどう変えたかは
誰も知らないから・・・少し怖い」
一応
言葉を投げ捨てる様に
呟いた
「律は・・・大丈夫
だから・・・俺は送るよ」
いつもは優しく女の意見に寄り添うのだが
今回は譲らなかった
「そっか・・・じゃ
私も信じるしかないね」
そういうしかなかった
それ以上ごねると
悪い女になりたくなかったから
でも
女の気の強さは、ため息交じりの語尾に残った
【勝手な想像(完)】
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