[番外編]間宮さんはヒロインにはならない3(物語が始まる前の話。間宮視点、SS)

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「間宮さんにお願いがあるんだけどいいかな?」 「いいよいいよ、どんと来てちょうだいっ!」 「ふっ……ははっ……凄く頼もしいね」 「……?」  お世話になってるんだから、これ位はさせて欲しい。私は柔道の構えみたいな体勢で春風くんの言葉を見逃さないように耳を傾けた。  こっちは真剣に聞こうと構えてるのに春風くんは可笑しそうに笑っている。何でだと理解出来なくて首を傾げた。 「一之瀬に話の内容は何でもいいからたまに声をかけてやって欲しいんだ」 「うん! それだったら全然……。でも私が一之瀬くんに声掛けって。春風くんじゃダメなの? それとも何か理由があったりするの?」 「僕なんかじゃ……。間宮さんのような女の子が話しかけてくれると一之瀬が凄く嬉しそうなんだ。他の子には頼めなくて。僕は一之瀬が喜ぶ顔をずっと見ていたいんだ」 「春風くん、それってもしかして……」  照れ臭そうに笑っている春風くんの表情を見て私は頭に明るくぱぁっと浮かんで直感した。これは恋してるに違いない。それによく一之瀬くんと一緒にいて過剰な程の気配りをしているからきっとそうだと思う。  春風くんって健気なんだぁ。想われてる一之瀬くんは何て果報者なのだろう。 「春風くんっ! 私ね……私ねぇ、応援するねっ!」 「ありがとう、間宮さん」  困った顔をした春風くんの両手を包むように握った。私は上手くいくように熱くこの掌に気持ちを込める。
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