プロローグ

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プロローグ

 変わり映えのない平凡な日常に一之瀬弥太郎(いちのせやたろう)は毎日うんざりしていた。物語のスポットすら映らないモブ(エキストラ)の俺なんて主人公もしくはメインキャストのただの引き立て役に過ぎない。  きっと名前すら名乗らず、呼ばれずに誰にも知られないまま物語は幕を閉じるだろう。  中学二年の後半になると、将来の目標に向けて進路希望調査票を配られた。生徒各々がどこの高校を受けるのか、将来はどうするのかなどと隣の席同士または前後の席でざわめいてた。  そんな中、一之瀬は来年の高校デビューに向けてどうしたら人気者になれるか真剣に考えていた。  容姿は所詮どこにでもいる平凡顔では努力した所でイケメンになれる訳がない。スポーツだってそうだ。スポーツのできる奴なんてわんさかいる。きっと目立つ事もなく埋もれるだろう。  ある時、一之瀬はピーンと閃いた。有名な進学校に入学後の合コンや友だちの集まりを想像してみた。  ──あの進学校の人なの?将来有望っ!一之瀬くん、知的で素敵!  ──一之瀬ってあの進学校の生徒なんだ。すげーじゃん。  自分の都合の良いように妄想が浮かぶが悪くない。そして一之瀬は思った。有名な進学校の生徒になればモテるに決まっている。思い立ったらすぐ行動。早速、進学校の情報収集を始めた。  入念に吟味した結果、自宅から通える県内トップクラスの進学校である私立彩色学園(しりついろどりがくえん)を目指そうと考えた。転勤族だった父親が転職したばかりと言う事もあって資金面で心配させないように県外の学校は候補に入れなかった。  何故か他の学科よりも倍率がかなり低いらしい。多分、憶測だが普通科以外はかの有名大学入試に有利な特殊な学科が人気だからだろう。それに普通科は私立彩色学園内で学力の偏差値が低いのもある。  だから今からでも勉強を頑張ればぎり入れるかもしれない。そう信じて立ち止まらずに諦めずに歩き続けた。  そして俺は……──。
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