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(くそぉ、二学期始まったばっかなのに寝坊かよ)
家を出て猛ダッシュで走り続けているが、帰宅部で体力があまりなくすぐに息があがった。
しかし、成績順位が下の方で特に秀でたステータスを持ってなく何も取り柄のない一之瀬は遅刻する訳にはいかない。せめて生活態度を良く見せて評価に響かないように真面目に生活せねばならない。
一年目で留年なんてしたくないんだよぉぉと心の中で叫びながら、日差しが眩しく残暑が続いているこの季節に必死になって走った。
廊下は走るなとは小学時代からのルールだったが、早歩きではセーフなのか、アウトなのか迷ってる暇がなく早歩きで教室に向かった。
教室の前に着いたが、急いでるのもあってガタンといつもより気持ち強めに教室の扉を開けた。強めに開いた扉の音と共にクラスメイト達が振り向いて一瞬だけ静かになったが、特に気にする事もなくまたいつもの賑やかな教室に戻る。
一之瀬ははぁはぁと呼吸を整えながら自分の机にゆっくりと向かう。
「一之瀬っ! おはよ! 今日は俺の方が早いな」
「はぁ……おはよう。別にお前と早いかどうかは競ってねぇけどな」
「それもそうだな。でも今日は俺の勝ちだぜ」
「ああー、わかった、わかった。今日はぁ朝早いかどうかで花岡くんに負けましたっ。俺は物すごーく悔しいです! これでいいか?」
「ぷっ。何だよ、それ」
小学生のようにふざけて喋ったら、花岡は笑いを堪えられず吹き出し、一之瀬はフッと笑いながら鞄を机に置いて一息ついてから席に着く。
最初に明るく挨拶したこいつは一之瀬の隣の席でこの高校に入ってからの親しい友達の花岡大佑だ。
身長は一之瀬より少し上くらい。少し童顔だが、可愛いらしい訳ではなく一般男子高校生らしい素朴な顔立ちだ。
一般的なスポーツを完璧にこなし運動神経抜群。勉強は苦手って言ってる割には成績は一之瀬よりも若干ではあるが上ときた。顔の偏差値もやや高いのも気に食わないが、裏表ない性格で良い意味でも悪い意味でも思った事はすぐに口に出す……と言うか口に出ている。
一之瀬的にはいい奴だと認識している。
「おはよう、一之瀬。今日は何かあったのか? いつもより遅いから凄く心配したよ」
「はよ。……ってマジな顔するなよ。ただの寝坊だ、寝坊」
「本当に寝坊なの? まさかトラブルに巻き込まれたんじゃ……」
「ないない。それは絶対ないから」
春風はすっと出したハンカチで俺のおでこ、頬、首元の順にトントンと優しく汗を拭き取ってくれた後にネクタイの位置を定位置にしたり身だしなみを整えてくれた。
心配そうに見つめながら、一之瀬の世話を焼くこいつは前の席で同じくこの高校からの親しい友達の春風優希。
隣の席の花岡とは幼小中学までも一緒で幼馴染らしく身長は一之瀬よりかなり高い。歳の割には目、鼻立ちがくっきりとした男らしい顔立ちでややがっちりとした体格で羨ましい。成績は常に学年でトップを維持。花岡程ではないが、スポーツもそつなくこなす。顔もそこそこいい。
穏やかな口調で温厚な性格。完璧な優等生だが、ここまで聞いたら妬まずにはいられない。だがしかし同じ中学の奴から聞いた話だが、その頃やんちゃだった花岡の尻拭いとフォローを当たり前のように毎度してたみたいでかなり大変だったらしい。その香ばしいエピソードの数々を聞いて同情してしまった。
言わば花岡のストッパー的役割をこなしている。
だからこいつには妬みなどは一切抱かない。
「寝坊とか言いつつエロ本の立ち読みで遅くなったりして……」
「それはおめーの事だろうがっ!」
「怒ってる所が怪しいなぁ。白状しろよ、いっちー」
「寝坊だっつーの。何故か今日に限って目覚ましが鳴らなかったんだよ」
「ベタだな、つまんねぇの」
霧谷はどうでも良さげに話す。
からかっているこいつは同じくこの高校からの親しい友達で後ろの席の霧谷拓篤。
花岡と春風と同じ中学出身。身長は春風と同じか少し上位。人気アイドルグループにいそうな容姿で少しチャラいが、コミュ力が高くて空気が読めるし、話し上手。成績もいい方でスポーツもそこそこ出来る。
他のクラスにも男女友達が多いらしく休み時間はあっちこっちに行ってて友だちが少ない童貞の一之瀬にとっては正直、裏山けしからん奴だ。
だが、それを鼻にかけないし、スクールカースト下位の一之瀬にも普通に接してくれるいい奴だ。
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