泣き虫

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澪からもわざわざ会社の携帯に連絡が入っていたけど、そっちもスルーで。 陵から澪に連絡がいっているかもしれないし。出ないに限る。 でも、会社の番号も陵は知っている。 プライベートの電話に出ないのが分かると、今度は陵からも会社の携帯にまで電話がかかってくるようになってしまった。 着信拒否にでもするか・・・・そんなことを考えながら、得意先との夜のスケジュールのために、オフィスから出たところに陵がいた。 見なかったことにして通り過ぎることは出来ないか・・・・そんなことも考えたところで、バッチリ視線が合ってしまったから、そうゆうわけにもいかなくて・・・ 「出帆」 名前を呼ばれると同時に腕を掴まれた。 「何か御用でしょうか?」 自分でも驚くくらい冷たい声が出た。 「理由を教えて」 「何の?」 「僕、一体、何をしたの?出帆を怒らせるようなことをした覚えがない」 「別に、弟とそんなに遊ばなくてもいいかなって。ちょっと冷静になって考えてみた。普通の家族でも、身内でも、そんなに連絡とりあわないことも多いじゃない?」 「いきなり弟とかって何な訳?」 「事実を述べているだけよ。今日、これからちょっと接待なんだよね。もう行かなきゃだから、離してくれない?」 「話す時間が欲しいんだけど」 「私に話すことはないよ」 「僕にはある」 そこに丁度タクシーがきたので、私は掴まれてない手を挙げた。 タクシーが停まる。 「仕事だから放して」 「出帆、時間を下さい。話す時間。お願いだから」 陵が思いの外、切なそうにつぶやくから、心が揺れる。 「当分、忙しいから、時間が出来たら連絡する」 「絶対、連絡くれないつもりだよね?」 「するし」 そう強めに断言すれば、陵の拘束がちょっとだけ緩む。その隙に、陵の手を振り払って、タクシーに乗りこんだ。 「どちらまで?」 「有楽町まで・・・」 オフィスから有楽町なんて歩いても行ける距離なのに。ちょっと機嫌の悪くなったらしいタクシードライバーにちょっと溜息。 「その前にお土産を買いたいので銀座寄ってもらえます?ちょっと店前でまっててもらってから有楽町」 なんでタクシードライバーにまで気を遣ってるんだろう?まぁ、手土産を用意する必要があったから、まぁいいかと自分を納得させる。 陵には私からちゃんと連絡をとればいいだけのこと。 「私には年下はやっぱり無理」 そう言えばいい。それだけだ。
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