イギリスにいます

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「俺は出帆だけだよ。Loving you, Izuho」 耳元で囁くのは止めて欲しい。私が耳弱いの知ってるから、きっとわざとだ。でも、ちょっとだけ心地良いと思ってしまうから厄介だ。私の理性、しっかりしろ。 「私も、かな」 叱咤する気持ちとは別のところで、私の口は勝手に動き始める。 「『かな』は要らない」 そう言いながら、私のアゴを掬いとって、視線を絡ませる。熱い視線にこちらは思考能力停止中。私の負け確定だ。でもちょっとだけ、悔しくて、私は陵の首に腕を回すと耳元で囁き返す。 「I need you」 そう言えば、ちょっとだけビクッとする陵がちょっと愛おしかった。でも、すぐに陵の私の腰を抱く力が強くなる。 「出帆はずるいなぁ」 「何がよ?」 「それは先に言いたかった。先に言うって決めてたのに」 そう言って陵は私にいっぱいのキスをする。 愛おしくて仕方がないとでも言うように。 「You're everything, Izuho.」 これは和訳しないでおこう。 「照れてる?」 「うるさい」 「All I need is you. I’ve been thinking about you. I wanna be with you. I only have eyes for you.」 「ストーップ。もう勘弁して」 「まだ足らない。何なら日本語でも言おうか?」 「ホント、もう・・・・」 「出帆、顔すっごい真っ赤」 「年上をからかうな、敬え」 「どう考えても、こっちに来てからは出帆のほうが後輩格、年下ポジション」 「自覚してるわ」 「してるんだ?」 「陵に(かな)うところが見つからないから」 「じゃあ、素直に少しは甘えてよ。酔った時だけじゃなくてさ」 「酔った時、私、陵に甘えてるの?」 「ちょっとになるところが可愛い。だから素面(しらふ)のときもさ」 私の反応を確認するかのように、深く視線を絡ませる。この状況、完落ちしないでいられるはずもない。 「・・・甘え方が分からない」 そう言えば、私の腰を持ち上げると、陵は自分の膝の上に乗せる。密着度の高い、この向かい合わせの態勢はかなり恥ずかしい。 「さっきみたいに出帆の方からもハグをして。いつもは無理でも、たまには『好き』って言って。遠慮しないで。距離を置こうとしないで。俺の気持ちから逃げないで」 そんな風に言葉を重ねられれば、ドキドキが止まらなくなる。 「・・・善処します」 陵の視線を躱すように、下を向いていたのに、頬を押さえられ、再度、視線がしっかり合うように上を向かせる。 「さっきみたいに出帆の方から抱きしめて」 おずおずと腕を伸ばせば、陵はそのまま自分の首の方へと導く。抱きしめられるように、私の腰を支え直すと陵は立ち上がる。 「今夜はいっぱい仲良くしようか?」 この流れはヤバイよね。 「ちょっと待とうか、冷静になろう」 いきなり過ぎる展開に、こちらは慌てふためくばかり。 「もう大人しく『待て』をするのは止めました。これから出帆に甘え方を教えてあげる」 「ホント、いろいろ準備が出来てないから」 「出帆の準備が出来るの待ってたら、この先、いつになるか分からないからね」 ちょっと意地悪そうにそう言うと、私の肩にコテンとおでこをあててくる。 マジカマジカ・・・・ここから抜け出す方法はありますか? 「出帆は甘えてるだけでいい」 マジカマジカ・・・そう思いながらも、もういいかと思う自分もいる。 体から力が抜けた。そんな私を陵は抱きしめる。 もう、いいのかもしれない・・・どうせ私は陵無しじゃ、淋しくて眠ることも出来ないのだから。 「素直な出帆も可愛い」 私は陵の耳元にキスをして囁く。 「もう『要らない』なんて、言わないで」 陵は私の背中を優しく擦ると、彼の部屋に移動する。私をベッドに優しく下ろすと、陵は私にキスをした。 「I need you. 出帆はこれからもずっと必要です。だから結婚しようね」 <完>
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