家庭菜園にっちもさっちも

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「今日も変わったもん食べてますねえ」 「これえ? 大根の葉っぱだよ。知ってる? 大根の先っぽを水に付けてると芽が出てくるんだよ。十回くらいまでだったら、比較的新鮮な大根の葉っぱをいただける」  私のお弁当は、いつだって野菜が多い。  というか、安い野菜を買おうとしたら、どうしても結果的に量が増えてしまう。でもひとり暮らし用の冷蔵庫にそこまで野菜が入る訳もなく、必然的に、どうしたら少ない量で毎日満足野菜が摂れるか考えることになってしまう。  大根とニンジンは、もうもったいないから一生懸命洗って皮も食べている。ジャガイモはさすがに芽の毒が怖いから、泣く泣く皮を剥いで食べている。タマネギの皮は出汁にならないかと実験したものの、世にも奇妙な悲しい味の出汁ができてしまったから、泣く泣く捨てた。  世の中、肉は高い、魚は高い、野菜は高いとなったらなにを食べればいいんじゃっちゅう世知辛い世の中なのだから、せめて野菜くらいは満足に食べさせて欲しい。  私が見切り品のベーコンを大根の葉っぱに巻いて焼いた葉っぱベーコンを、後輩は悲しいものを見る目で見ていた。 「……先輩、もうちょっとこう、悲しい感じにならない料理にするのはどうですか?」 「さすがに体に悪いから、日の丸弁当をつくったことはないよ。あれは悲しい、誰も得しない」 「下から挙げていってどうするんですか!?」  そう言われてもなあと思ってしまう。  元々我が家では野菜たっぷり食べて育ったのに、仕事の都合で上京した途端、地元の感覚で物が買えない、物価が高過ぎると面食らったら、こんな生活になってしまったのだから勘弁して欲しい。  今日も家に帰ったら野菜の様子を見ないとなあと暢気に思いながら、私は今日の弁当を食べ終えた。
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