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「家庭菜園もはまると沼だろうなと、土栽培はしないつもりだったんだけどな」
でもホームセンターの家庭菜園コーナーのうきうきっぷりは、野菜を育てている人間からしてみれば半端ない。
種のコーナーに行けば、しそは簡単に見つかった。とりあえず土と軽石、種を購入して、スマホで検索しながら育ててみることにした。
鉢は考えた末に、またしても牛乳パックでつくってみることにした。もし牛乳パックじゃ間に合わなくなったら考えよう。
「とりあえず軽石を鉢に敷いて、そこに土をかけ、種を撒くと……育てられるかなあ」
虫食いとかあるのかな。この辺りはあんまり虫も鳥も来ないんだけど。
気を揉みながら、毎日の水栽培と一緒にお風呂の残り水をあげて育てはじめた。大きくなあれ。大きくなあれ。
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「おおっ、すごい! しそだ!」
当たり前の言葉が出た。
しばらく放置していたら、芽がたくさんプランターから出たのだ。とりあえずあんまり育て過ぎても栄養の奪い合いになってしまってよくないと、こまめに間引きをしておくといいらしいと出ていたので、何個も引っこ抜いてお味噌汁の具にしたけれど。
漂う匂いが、小さくても紛れもなくしそ。味噌汁にしそって若干申し訳ない感じがするけれど、間違いなくしそだった。
芽が出て、混み合いそうになったら間引き、混み合いそうになったら間引きを繰り返していったら、だんだん葉っぱも大きくなってきた。
そして。その量もだんだんと多くなってくる。しそをあれこれとつくって、毎日ささみしそチーズやしその醤油漬けが並んでくると、欲というものが出てくる。
「……先輩、最近どうしたんですか?」
「いやあ、しそを育てていたら楽しかったから、もうちょっと他にもレパートリー増やせないかなと思って確認してた。ミニトマトは育てるとなったらたくさん実が成るけど、あんまりおいしくないんだよねえ。ならきゅうりだったらどうかなと」
「……先輩、節約はどこに行ったんですか?」
「よくよく考えると、きゅうり育てたらグリーンカーテンになるか。ならきゅうり育てよっか」
後輩のつっこみはさておいて、私は今日も家庭菜園に勤しんでいる。
いろんな野菜を千切りにして豚こまと炒めた野菜炒めに、しそと出汁で漬け込んだ浅漬け。もやしのナムル。節約しながら野菜もたくさん食べられると、嬉しいし楽しいし、もっと育ててみたいと思うんだ。
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