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「…う、あぁ!」
裕太は思い切り亮の手を振り払うと、ベンチから立ち上がった。
心臓が早すぎて痛い。
呼吸をすることも苦しくて、裕太はその場にしゃがみ込んだ。
「どうした?大丈夫か?」
後ろから、亮が言う。
振り返ると、亮はベンチに座ったまま驚いた顔で裕太を見下ろしていた。
手には、湿布を持っている。
「湿布貼らないの?背中、痛めたんだろ。」
裕太は、亮を見つめた。
…え?
今のは…なに?
「貼ってやるから、ここ座って。」
亮は湿布のフィルムをペリペリと剥がした。
「…うん。ごめん。」
裕太はふらふらと立ち上がると、亮に背中を向けて座った。
何だよ、今の。
夢?妄想?
はぁっと、小さなため息をつく。
そういえば昨日の夜、かなり濃厚なBLのドラマを見た。
おもしろいから見たほうがいいと、高校生の妹に無理やりつきあわされたのだ。
絶対あのドラマのせいだろ。
マジで焦った。
そういう感情が芽生えてしまったのかと思った。
変な妄想までしちゃったじゃないか。
…。
…妄想…だよな?
「痛めたのどの辺?ここ?」
亮が裕太の背中を触る。
「…うん。もうちょっと右くらい。」
亮は言われた場所に湿布を貼ると、手で優しく抑えた。
「次、俺にも貼ってくれる?首の後ろと腰の真ん中くらい。」
そう言って背中を向けた亮は少し寂しそうだったが、裕太はそれに気づかなかった。
完
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