オレンジの中で

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オレンジの中で

夕日が窓から差し込み、部室全体をオレンジ色に染めている。 (りょう)はおもむろにTシャツを脱いだ。 「裕太(ゆうた)、お前も脱いで。」 オレンジ色の光の中で、亮の鍛え上げられた上半身が艶めかしく浮かび上がる。 「あぁ…うん。」 裕太は言われるがままに、汗で濡れたTシャツを脱いだ。 他の部員は皆帰ってしまい、今この部室には亮と裕太の2人だけだ。 先程まで他の部活の部員が廊下で騒いでいたが、今はしんと静まり返っている。 「そこに座って。」 夕日が眩しいのか、亮は目を細めた。 その涼しげな視線に、ドクンと心臓が跳ねる。 裕太は部室の中央に置かれたベンチに、またがるように座った。 すると、亮も同じようにベンチにまたがり、裕太の後ろに座った。 「動かないで。」 亮が静かな声で言う。 「体、いい感じに仕上がってんじゃん。」 そう言いながら、裕太の背中を指でなぞった。 上から下へ。 裕太の体が固くなる。 「…毎日…筋トレしてるから。」 心臓が早くなっていくのがわかる。 「そっか。」 ふいに、亮が裕太の耳にキスをしてきた。 そして耳たぶを軽く噛む。 「ちょっ…と。」 裕太が体をよじらせると、 「動くなって。」 と、亮が耳元で囁いた。 そのまま後ろから抱きしめてくる。 「こういうの、嫌?」 裕太は、徐々に体が熱くなっていくのを感じた。 「嫌っていうか…こういうの、は、初めてだし…。」 ふっと亮が笑った。 息が耳にかかる。 くすぐったい。 「女とはこういうことやってんのに?」 「…そうだけど。」 それとこれとは…。 違うだろ。
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