双子コーデ

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双子コーデ

 朝。まだ目が覚めなくて眠そうな湊音に対して李仁は朝ご飯を出した。 「ありがとう、なんかずっと寝られなくってさ」  「かと思った。私はしっかり寝たから移動中はしっかり寝てね」 「そうだね、でも移動中も旅行なんだから起きなきゃ」 「いいのよ、京都着いたらシャキッとしないとだめよ」 「わかったよぉー」  ご飯も食べ終わり着替えをする。  今日はなんとなく双子コーデを意識している。考案は珍しく湊音だった。それを聞いて李仁がクローゼットから探してスタイリングする。  同い年で誕生日も近い。でも明らかに身長差、顔の作りの違い。湊音のほうが弟に見られる。  普段眼鏡のかけない李仁は眼鏡をかけてピアスの穴がない湊音はイヤリングして。似せるだけ似せてみた結果双子コーデになったのだ。  ちょっとおしゃれにブーツ。  なかなか湊音は履かないがいつか旅行のためにとバックパック買った時に一緒に買った。 「めっちゃいい」 「ね、って一緒になってからこんなにゴリゴリにお揃いにしたのは初めてね」 「なんかタイミング逃しちゃった気もするからなんとなく」  二人は鏡の前で笑った。とりあえずツーショットをスマホで撮った。  やはり行きの電車では湊音は爆睡していた。ちゃんと名古屋で起こして新幹線に乗り換える。  新幹線の中では乗る前にスタバによってコーヒーを買う。 「最初はここ行くでしょ。で、次は」  ガイドブック片手に行く先を決める。まだ決めていなかった旅先。ざっくり京都と行っても広すぎる京都。  食べたいもの、寄りたい場所、買いたいお土産。アレコレ話すだけで決まっていく旅行プラン。  気づけば京都だった。 「あっという間だったね」 「ほんとだ……」  京都駅は他の観光地よりも観光客が多い、東京のほうが人が多い感じがするのだが京都はそれ以上に感じるのはなぜか。  もちろん東京の人の多さには湊音はうんざりしているが。  まず行き先は八坂神社。  バスに乗る。 「人多すぎるのだめだろ、タクシー使う?」 「大丈夫だよ、李仁。タクシー乗るんだったらその分美味しいご飯食べたいじゃん」 「あそこのヒレかつサンド、食べたいんでしょ」 「うん、10年ぶりに食べるんだもん」  二人が以前京都旅行で食べた一個1300円ほどのヒレカツサンド。湊音はそれが格別に美味しかった。それがすごく楽しみなのだ。  八坂神社に着き、そこから歩いて回る。履いてるブーツは歩くには最適なものだ。  いろんなお寺や神社、清水寺あたりは行かない。どうやら修学旅行生が昨日あたりから来ているらしくあちこちに学生服を着た若者は点在していた。  ちゃんとお目当てのヒレカツサンドを食べて二人は心も体も満たした。 「満足ですか、湊音さん」 「はい、満足ですよ。李仁さん」 「また行きたいね」 「絶対行こう。たぶん次来たときこのヒレカツサンド、また高くなっちゃうかもね」 「10年のうちに200円もアップしてたしね、わかるわ……高騰してるしさ。この値段でもやってるだけでも奇跡よ。もっとちゃんと味を噛み締めないとね」 「うん」  10年ぶりに二人できた京都。変わってるところももちろんあった。でも変わらない景色もあった。  他にも行きたいところも前行って行った場所にも行きたかったが日帰りでは無理だった。  でもそれは二人でまた行こうという口実にもなっているのかもしれない。    李仁は流石に疲れたのか新幹線の中で寝ていた。湊音の肩に頭乗せて。  湊音はこっそりスマホを取り出して寝顔の李仁とツーショット。 「いい記念だ」  と微笑んだ。  しかし、それからだった。湊音の調子が少しずつおかしくなったのは。
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