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凪紗は俺と同じ、高校を受験する時には出雲姓になりたい事を父ちゃんには伝えたそうだ。
そしてそれは受け入れられた。凪紗がそう思うならそうしようと。
凪紗が法曹を目指していることは結局誰にも内緒、特に美音には言わないでくれと念を押された。せめて大学の法学部に合格出来るまではと。
美音が何かを気にしてしまったら嫌だから、と。
「それでね、拓兄にお願いがあるの。拓兄とみぃ姉は赤ちゃんが生まれたらここの三階に引っ越して来るのよね?」
「ああ、美音がそう言っていたな」
ここならトイレも水周りもあるし、小さいがエレベーターもある。アトリエ全体が目の届くベビールームになる。
「拓兄の部屋をもらいたいの、あそこなら勉強に集中出来るでしょ?」
そうか、こっちの学習室だと真也もいるしひかりもよくお絵描きとかお遊戯とかして遊んでいるな。確かに勉強の邪魔になるか。
「分かった、美音に言っておく」
「うん、お願いします。ここだと真也はともかくひかりがいると私が遊んじゃうのよ。ここに拓兄とみぃ姉の赤ちゃんが来たら、ワタシ絶対部屋に入り浸って一日中抱っこしたり遊んだりしちゃうと思う。絶対可愛いもん」
そっちね、凪紗は自分を知ってるらしい。ひかりのオムツもミルクも姉妹で競い合ってやっていたもんな。
「とにかく頑張ってみる、拓兄に聞いてもらってちょっと気持ちが落ち着いた」
凪紗がほっとしたように言う。
「何かあったらすぐに連絡しろよ、俺も卒業したらすぐにこの家に帰って来るから」
道のりは遥かに遠いけど、自分を追い詰めるなよ。
「うん、分かってる。大丈夫よ」
頑張り屋の俺の妹は、ちゃんと頷いてくれた。
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