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そしてそのあとは、ばあちゃんの所だ。
ばあちゃん宅に戻るとじいちゃんがソファーに座っていた。その前のテーブルには小さな箱がある。
「じいちゃん」
声を掛けじいちゃんの前に座る。ばあちゃんが温かい麦茶を持ってきてくれた。
「拓海、これだよ」
その小箱を手に取って俺に手渡してくれるじいちゃん。俺はその箱の蓋を開け、綺麗なビロードの布で覆われたその箱を開ける。
中にはプラチナと金で綺麗にデザインされた指輪が二つあった。そのモチーフは鳥の羽だ、その大きい方を手に取る。
「本当に素敵ね、美音のデザイン画の通りだわ」
ばあちゃんも向かい側に座ってくれた。
これは俺と美音の結婚指輪だ。ばあちゃん行きつけの宝飾店に注文していた物を先日じいちゃんが受け取ってきてくれた。
「ありがとう、お店の方に無理させたかな」
俺が美音の妊娠を知ってからだから一ヶ月もなかったはず。これのデザインは前から準備されていたから、ばあちゃんに頼んで特注してもらった。
「大丈夫よ、喜んでやってくれたわ。それより美音のデザインにとても感心しててね、美音にその気があるなら今度指輪のデザインとか頼んでみたいとか話されてたわ」
「へぇ」
「リングの内側に小さな石が埋め込んであるでしょ?それもとても良いって」
内側…俺のリングの内側には小さなアクアマリン、美音の誕生石だ。そして美音の方の内側にはアンデシンが入っている。
「うん、良いね」
俺はそれをそっとケースに戻した。
「拓海」
「はい?」
じいちゃんがいつもの優しい碧の眼で俺を見る。
「私はとても嬉しいよ、私の大事な小さかった孫が二人で新しい人生を歩もうとしているんだ。本当に嬉しい」
じいちゃん…それもじいちゃんや父ちゃんが、子供だった俺達をずっと護って来てくれたからだよ。
俺ももうすぐこの家の護り手の一人に加わる、じいちゃんや父ちゃんの様に出来るか不安もあるけど、それは本当に誇らしいよ。
「じいちゃん達がいてくれたから、俺も美音もここまで来れた」
「うん?」
「これからも俺達はずっとじいちゃん達と一緒にいるよ、俺達はじいちゃんの孫で出雲櫂の子供だ。二人の背中をずっと見て育ってきた」
そしてその後ろ姿にこれからも学んでいく。この家の男としての生き様を。
「長生きしてくれよじいちゃん、そして俺の息子にも見せて欲しい。アルフォート・ミッターマイヤーというとても優しくそして強い、揺るぎない愛情と信念を持った俺のじいちゃんをさ」
俺の言葉を聞いたじいちゃんが静かに笑った。その笑顔はちょっとだけ照れてるようで、けどとても嬉しそうにも見えた。
「ありがとう拓海」
その言葉を言ってくれたじいちゃんの隣りで、ばあちゃんがそっと涙を拭った。
大丈夫だよばあちゃん、ばあちゃんとじいちゃんの愛情はちゃんと出雲家の子供達に伝わっている。
俺達はそれを、決して忘れないで生きていくんだから。
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