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朝、東京行きの始発列車に乗る為に起き出す。
ふとにゃん太のベッドを置いた足元の座布団を見たが、一応大人しく寝ているようだった。俺が起きたのを確認したかのようににゃん太も起き出し、俺よりも先に階段を降りて行った。
とりあえずにゃん太は大丈夫そうだ、良かった。
俺が色々準備をして階下のリビングに降りると、母ちゃんが台所で何かやっていた。
「お早う拓海、朝ごはんにお弁当を作ったから持って行ってね」
そう言って弁当らしい包みを差し出してくれる。多分、おにぎりと何かおかずだ。
「ありがとう母ちゃん」
朝早いから適当にコンビニで何か買おうかと思っていた。母ちゃんの手作りならとても嬉しい。
「拓海、何時に出ればいいんだ?」
父ちゃんが洗面所から出てきた。いつもの朝のトレーニングウェアだ、もう走って来たのか。
「始発は6時ちょっと前だから、5時30分過ぎに出れば十分だけど」
「まだ時間はあるな、シャワー浴びてくる」
父ちゃんも今日から仕事だろうになんか悪いな、本当は母ちゃんに頼んでいたんだけど。
「お父ちゃんね、拓海を送るの自分が行くって言ったのよ」
母ちゃんがコーヒーを出してくれる。
「出来のいい次男だから、こんな事ぐらいしかやってあげられないからって言ってたわよ」
「え?」
父ちゃん、何言ってるんだ?俺なんていつも勝手な事ばかりやってるだけなのに。
俺は凪紗の様に父ちゃんの背中を見てその偉大な父の仕事を追っていこうとか、一瞬も思った事のないバチあたりな息子だし。
自分を親不孝だとは思わないけど、まだ親孝行は全然出来てない。どっちかって言うと負債が積もり積もっている真っ最中だ。
挙句にスネかじり大学生の分際で子供を作ってしまったし、それも全部結局は父ちゃんと母ちゃんに頼り切ってるし。
どこが出来の良い次男なんだ?
「昨日、お引越しするのにも拓海はちゃんと自分で全部仕切ってたでしょ。お父ちゃんはそれにも関心してたのよ、拓海はもう一人前の男だってね。俺が出る幕はなかったって」
いや、しっかり手伝ってもらったけど。だって父ちゃんがなんでも出来るのは知ってるし。
「お父ちゃんは昔から過保護だもん、もっともっと自分の子供達には手間を掛けたい人なのは確かよ。ちょっと度が過ぎるくらいね、出る幕が無かったはお母ちゃんもちょっと笑っちゃったわ」
なるほど。
ちょっと納得したかも、確かに父ちゃんの家族に対する過保護は度を越してるもんな。
「拓海は兄弟の中で一番お父ちゃんに似ているわ、そしてとても親孝行よ。お父ちゃんと私にはそれが何よりのプレゼントよ」
そして母ちゃんは話を終えた。それ以上は教えないよといたずらっぽく笑って。
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