act.1 東風(こち)

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   部屋にいたらにゃん太も猫鍋ベッドに戻ってきた。最近は美音がいないからリビングのケージで寝ていたみたいだけど、俺が帰ってきたからサービスのつもりかな。  しばらく部屋でのんびりした後に風呂に入った。 『私も早くぴーちゃんに会いたいわ、もっとご飯をしっかり食べないと』  美音の言葉を思い出す。全くだ、俺も美音がここにいないとこんなにつまらない。 「父ちゃん、俺」  いつものように書斎のドアをノックする、返事を待ってドアを開けた。 「おう、これだぞ婚姻届は」  小さな応接セットのところに父ちゃんがいた、クリアファイルに入ったその書面を持ち上げている。  父ちゃんの前に座る俺。これが婚姻届か、初めて見た…当たり前か。 「結婚の証人が要るんだね、二人か」 「ああ、誰にするんだ?」  誰って…はて? 「ひとりは北で良いかな」  あんな朴念仁(ボクネンジン)でも一応親友だ。 「良いって。ひどいな、おい」  父ちゃんが苦笑。いや、他に思いつかないし。  これ、俺の結婚に対する責任者だろ。ついでに責任を背負わせてやろう。あいつは責任感強いから、早死しないようにやらせたれ。 「もうひとりは父ちゃんで」 「俺か?美音に相談しないのか?」 「うん」  父親二人分だ、美音はきっと反対しない。 「分かった、あとで持って来い」  俺と美音が署名した後でだね。 「提出する日付は決まってるのか?ドタバタだからな」 「五月五日」  さっき美音と話して決めた。美音にはその日と決めた理由があった。 「子供の日か、良いな。印象に残る」  でしょ。  俺は書斎を出て自分の部屋に戻った。  
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