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「つーか中入れてくれよ、さみぃからさぁ」
ユーゲンさんは自分の身体を抱いて大袈裟にぶるぶるも震えて見せる。
そりゃあ勿論中に入れてホットコーヒー牛乳でも作ってあげたいが──。
「いや、無理っス。高校生なんて部屋に上げたらヤバいじゃないですか。アンタ俺のこと前科持ちにしたいんスか?」
「お前、そういう所は本当にちゃんとしてるな」
「というか、いつからここで待ってたんですか? そもそも、俺がここにもう住んでなかったらどうするつもりだったんです?」
このアパートへ入居してから今までずっと表札はあげていない。ユーゲンさんは何の確証があってここで待っていたんだ?
ユーゲンさんは気まずそうな顔をして後ろ頭をかく。
「……あー、その。引くなよ? 絶対に引くなよ??」
「内容によるっス」
「それ言うと思った。……オレさ、中2の頃から時々ここに来てたんだよ。お前が部屋に出入りするとこ、見てたんだ」
それってつまり……。
「え、ストーカーじゃん。引くわぁ」
「ほらぁ!! やっぱり引いたじゃーん! だから言いたくなかったのに~! もー、ほんともー!!」
「とまぁ冗談は置いといて。……何で声かけてくれなかったんですか?」
咎めるような声色になってしまったのは仕方ないと思ってほしい。だって俺はずっとユーゲンさんを想っていたんだ。
ユーゲンさんはヘラヘラと笑ながら「悪い悪い」と口先だけで謝っていたが、フッと真顔になる。
「……怖かったんだよ、オレ」
怖かった? 一体何が? ワケが分からないでいると、ユーゲンさんはボロボロと大粒の涙をこぼし始めた。
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