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「お前がもうここに住んでなかったら、オレは生まれ変わったのにお前に一生会えないかもしれない……そう思ったらなかなかこのアパートには来られなかった。……それでも勇気を出して来てみたら、お前はちゃんといた。嬉しかった、直ぐに声をかけたかった。だけど──。」
ユーゲンさんは泣きながら遠い目をする。
「お前がオレにちゃんと気がついてくれるか不安だった。オレのことなんて忘れて新しい恋人が出来てるかもしれない。そもそも今のオレとお前じゃ年の差がエグいし……だからもう、お前のことをオレで縛るのはよくないって思ったんだ」
「そんな、俺のことを勝手に──」
決めないで下さいよ、そう言う前にユーゲンさんはニッと歯を見せて笑う。
「でも、駄目だった。オレはどうしてもお前に面と向かって会いたかった。だから今日こうして会いに来たんだ。ほら、オレってワガママじゃん!」
姿形は変わってしまったが、ユーゲンさんの笑顔は変わらずキラキラとしていた。
「ユーゲンさん、俺が何でまだここに住んでいるか分かりますか? 分かってますよね?」
ソッとユーゲンさんの冷たい頬に触れる。
「……オレのことが、まだ忘れられないから?」
「そうですよ。俺はアンタのことが好きで、ここに住んでいたらまたアンタに会えるかもしれないと思ってたんです。……それが叶って嬉しいです」
「オレ、見た目も変わってかなりの年下になっちまったけど……それでもいいのか?」
「アンタがアンタなら、それでいいです」
もう一度、抱きしめる──
「お帰りなさい、ユーゲンさん。ずっとずっと大好きです、愛しています」
もう二度と手放さないように。
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