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 朝のホームルームは2週間後に迫った文化祭で2-1の有志が出店するパスタ屋さんに参加する人数の最終的な確認だった。  有志なので参加は義務ではないけれど、ほとんどのクラスメイトが参加を申し出ていた。  配られた班分け表にざっと目を通すと、修平やクラス委員の佐藤雪乃たちAグループは食材の発注と搬入、茜や男子のクラス委員の藤原浩史たちBグループは食器とカトラリーの調達、七海達のCグループは当日使用する一階の多目的ホールの飾り付けに当たっていた。  当日のサーブや調理はDグループの担当だけど、拘束時間が長いのと負担が大きいので手の空いている者が随時ヘルプに入るという段取りになった。 「今日の放課後は各グループにわかれて打ち合わせだぞ~」 「必要な備品はクラス委員まで申請してください」  文化祭は体育祭にならぶ二学期最大のイベントで、十月頃から準備が始まり、保護者はもとより校外にも限定でチケットを販売して本格的にお客さんを集める。  目玉は内容充実の保護者会主催のバザーと各クラス、クラブなどによる模擬店、文化部の活動発表などで、この時期、文化祭実行委員の面々は生徒会をしのぐ権力を持ち、鬼気迫る形相で校内を駆け回っている。  文化部は仕上げや調整でてんてこ舞いだし、運動部もこの二週間は練習を早めに切り上げて、力仕事の多い看板作りや舞台設定の現場へと借り出される。  多少、課題の提出率が下がったり、授業中の私語、内職が増えてもこの時期だけは教職員の方も大目に見てくれ、校内上げてイベントの成功を推進する構えなのが、公立高校にしては珍しいところだが、毎年、文化祭で得た収入でなにがしか学校の備品を購入したりするらしく学校側も真剣だ。  それだけに、模擬店とはいえ中途半端な規模やレベルでは認めてもらえず、2-1出店のパスタ屋「パスチェスト・クルービー」は調理室を借りて生パスタを茹で、ソースには秋の食材を盛り込んだ本格的なメニューで三百食完売を目指している。  いよいよ始動しはじめた模擬店の準備に七海はすこしわくわくしていた。
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