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14
駅の改札を抜け、市バスのロータリーを横目に商店街に向かって歩く。
時刻は16時半。
この間の件があったから、という理由で隣にはボディガードを買って出た修平が一緒だ。
「…駅から遠いのか?」
「ううん、ゆっくりあるいて15分くらいかな」
キョロキョロと看板を探しながら、七海たちはすでに20分くらいこの界隈を彷徨っていた。
「難しい道じゃなかったんだけど…」
そう呟きながらパチンコ店の角を曲がったとたん、衝撃的な光景が目に飛び込んできた。
「うわ、事故かな」
砕けたフロントガラスが歩道にまで散乱している。
ガードレールが大きく内側に押し倒され、側の街路樹に黒っぽい自転車が立て掛けられていた。
「なんか、怖いね」
「ん」
七海達はいそいでそこを通りすぎた。
閑古鳥はすぐ先だった。
閑古鳥は閉まっていた。
曇ガラスの引き戸がぴったりと閉ざされ、暗く静まりかえった店内に人の気配はない。
にもかかわらず、七海は妙に慌ただしい雰囲気を感じて店の裏手に回り込んでみた。
ビールの空き瓶がつまったケースが積み上げられた横に、鉢植えの並んだアルミの鉢台が置いてある。
おや、と思ったのはその鉢植えの土が水をもらったばかりのように黒々と湿っており、葉っぱから涼しげに水滴が垂れていたからだ。
「おかしいなぁ、さっきまで誰かいたみたい」
首を傾げながらもう一度店の前まで戻ってみると、修平が知らないおばさんと話していた。
よく見ると向かいの焼鳥屋の女将さんだ。
「七海、ここの大将が事故に遭って運ばれたんだって」
七海をみて、修平が慌てて駈け寄ってきた。
「うそ、じゃあさっきの現場って…」
「トラックが突然歩道に突っ込んできて…。救急車で市立病院へ運ばれたんだけど、そういえばバイトの男の子が付き添ってったんじゃないかしら」
女将さんは七海達の制服に気付き、そう付け足した。
「ありがとうございます、行ってみます」
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