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「どうしよう、サーモンが……」    木製のトロ箱を抱えた調理係の詩織が途方にくれて現れた時、七海は美穂と一緒に机をくっつけてクロスをかけた二人掛けのテーブルに、カトラリーセットを置いて回っていた。 「どうしたの? 真っ青だけど」  妹尾くんが徹夜で仕上げてくれたというパスチェストクルービーの看板をスマホで撮影していた佐藤ちゃんが、驚いて声をかけた。 「さばいて皮を剥いで半身づつの真空パックで届くはずが……」  トロ箱の中には尾も頭もついたままの、立派なのアトランティックサーモンが2本。  保冷剤とともにぎっちりと納まっていたのだ。 「これがあと3箱届いたの」 「ちょっと待って……」  急いでトロ箱の上に添付してあった納品書を確認する。 「ちゃんと『スキンレスサーモンフィレ真空パック』ってなってるけど……」 「発送元が手配間違えたか、発送伝票がテレコになって別の配達場所へスキンレスサーモンが届いているかどちらかじゃない?」 「どうしよう、うちのスキンレスサーモンはどこへ行っちゃったの?」  佐藤ちゃんが頭を抱えてしゃがみこんだ。 「とにかく、発送元へ連絡してみよう」 「さっきから電話してるけど、営業時間前で誰も出ないのよ」 「じゃ、近くのスーパーでサーモンありったけ買い出しに行く?」 「それじゃ時間も量も間に合わないよ」    美穂が言ったとたん、教室内は急に静かになった。
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