Raining Blood(1/28 '23 改

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Raining Blood(1/28 '23 改

 ――伊原邸。 「――そういうわけだ。カナとマサキを会わせてやりたいと思う」  ウラトは、先の電話でのゲンジロウとのやり取り――コフタ=マサキという刑事が、火鳥会が行っている捜査の協力に加わったこと。  それと、マサキの娘が、カナであるということ。  そのカナを、ウラトの方で預かっているということ――をレイハに説明した。 「行方不明だった娘が見つかったんだ。会いたいと思わない親がいるのか? 余とて、人の心を捨てておらんわ」 「かしこまりました。早速手配いたします」  レイハは一礼する。 「それにしても、警察に圧力がかけられている状態にも関わらず、刑事とのパイプを作り上げるとは。流石ですねウラト様」  レイハはこんなことを言い残し、部屋を後にした。  後ろ姿を見送った後、ウラトは呟いた。 「レイハは、アサトみたく真面目腐ってると思っていたが、気の利いた世辞を言うとはな。もっとも、地方警察の刑事なんかアテにならんが」 ***  一階の応接室のソファーにカナが座っていた。レイハから「ここで座って待っているように」と言われたからである。  カナがそわそわしながらソファーの上で待っている。少し時間が経ってから、レイハが、マサキを連れて入ってきた。  マサキを見たカナは、喜びのあまり言葉を失ってしまった。 「カナ?」  マサキは、呆然としているカナに呼びかける。 「お父さん?……お父さん!」  カナはマサキに駆け寄り、抱きついた。  カナに抱きつかれたマサキも、お返しにとカナを抱きしめる。  マサキは、感極まって目に涙を浮かべた。  涙を拭うため、サングラスを外す。  不意に視界が赤くなり、カナを殺してしまうかもしれない――カナの方を見ないようにと、細心の注意を払いながら。  その様子を見て、カナは何やら胸騒ぎがした。 「お父さん、大丈夫?」  娘の思わぬ一言に、マサキは内心気が気でなかった。 「カナ、話があるんだ」  気を取り直し、サングラスをかけ直してから、カナの方を向く。 「お父さんはな、今、お母さんを殺してカナをさらった奴を探しているんだ」 「お父さん、そいつは死んだわ」  カナの一言に、マサキは驚きを隠せない。 「なんでそうって言えるのかっていうことは、ごめんなさい、話せないの。でも、死んだのは確かよ」  カナは『リュクス』にて、ジェイに血を与えられ、ここに連れてこられた。  そもそも、リュクスにいたのは、何者かに連れていかれたからだ。  カナをリュクスに連れてきたものこそ、ケイコを殺し、カナを連れさった犯人であった。  犯人はヴァンパイアであった、ということは言うまでもない。  カナは犯人の毒牙にかかり――正確には『スロートバイト』を飲まされて――ヴァンパイアになった、というわけである。  もっとも、犯人は容疑者となる前に、ジェイの手にかかったわけだが。 「私も色々あって、ここから離れられない状態になっちゃったけど、皆、いい人よ。イハラさん、わかるでしょ? 頼めば、お父さんも一緒にいられると思うの。  だから……」  カナは言い淀む。  マサキはカナの無事を心の底から喜んでいた。  しかし、マサキは火鳥会と取引をしてしまった。オマケに法に触れるような罪まで犯したという有様だ。  マサキはカナと一緒にいたかった。でも、もう後戻りができないところまで来てしまったのだ。  何も言わずに俯いているカナに対し、マサキは肩に手を置いた。 「……そうか。とにかく、カナが無事で良かった。でもな、お父さんはカナやお母さんみたいな目に合う人を、これ以上増やしたくないんだ」  それを聞いたカナは顔を上げ、マサキの顔を見た。マサキの顔からは迷いが見られなかった。 「カナに会えてよかった。じゃあ、お父さんは行ってくるね」  そう言い残し、マサキは部屋を後にした。 「お父さん!? お父さん!!」  カナは、自分の元を去っていくマサキの後ろ姿を、目で追いかけた。
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