ゲームスタート

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一時間も経たないうちに飽きそうになってくるのに友樹は頑なに神ゲーだと言ってくるのには訳があるはず。 レベルアップ ボス戦 レベルアップ ボス戦…… 永遠と続くようなループを決められたコマンドでプレイし続けるのは面倒で仕方が無い。 あまつさえゲームをクリアするごとにノイズが段々と響き渡り、体調が悪くなっていく。 教会でセーブをする。 電源を切ると、ミートソースの匂いが鼻を伝う。 11時45分 気付けばプレイ開始から四時間以上が経過していた。 折角の休みもゲームに半日も吸い取られるほど無駄な時間は無い。 食卓に並べられたスパゲッティを黙々と啜る。 「たっちゃん? なんか具合悪いの? 顔色おかしいけど?」 「うん? 全然大丈夫だけど?」 「そう? 顔色青いからゆっくり寝なさいね!」 そんな顔色が悪いのか?  鏡を覗いても違和感のない肌色が保たれている。 気付けばゲームを起動させていた。 無意識の内にコントローラーをいじり 脳のやりたい感情が止まらなくなっていた。 レベルアップ ボス戦 レベルアップ ボス戦 レベルアップ レベルアップ...... レベルは50まで上がろうともストーリーは進む気配はしないし、同じモンスターばかりで新鮮味も無い。 「あー いつになったら進むんだよ。」 教会でセーブを終え コントローラーを無造作に投げつける。 「どうしたの? そんな騒いじゃって えっ?」 「えっ何? もうご飯なんでしょ?」 「何回も呼んでも来ないんだもん。 心配になったんだよ。 それよりどうしたのこの壁。」 壁? 真っ白なタイルのまま 「掻きむしっちゃって 何か嫌なことあったのかい? 異常だよ。」 壁が異常? かきむしられたあと? そんなのどこにも無い。 でも母の怒号に近いような声高は冗談でも何にでも無い。 「あー これ? 前からあったんだよ。 この前ポスター貼ってあったじゃん? この傷を隠す為に貼ったのもあるんだよね。 最近汚れちゃったから外したんだけど。 驚かしちゃってごめんね。」 「なんだ びっくりしちゃった。 いつから付いたんだろうね? まぁ早く食べなさい 今日は唐揚げいっぱい作ったんだからアツいうちに食べ無いともったいないでしょ。」 最近アイドルのポスターを剥がしていた。 咄嗟の知恵を思い出す自分に自画自賛をする。 母はブツブツと呟きながら階段をゆっくりと降りる。 ベッドど枕には深紅に染まったペンキの欠片と血溜まりが広がっていた。
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