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ゲームスタート
新品で周りの音を一切遮断するヘッドホンををつける。
ノイズの音が気持ちいい。
最初はあれだけ体が受け付けなかったのに、マッサージを受けるよりも スパを体験するよりも遥かに快感で その音を待ち続けていた。
ノイズが戦闘のドキドキ感を演出させてくれる。
その音がないと気持ち悪い
もっと鳴ってくれ もっと もっと もっと
パン!
「何やってたの? レストラン一緒に行くんでしょ?
ほらゲームしてないで 早く準備していくよ。
でもたっちゃんどうしたの?
変な声出してたよ。 そんなこと言いたくないけど不気味だったよ。
妖怪が笑ってるみたいな声
下にも聞こえてるから注意しなさい。」
仕方なくセーブを済ませ、上下ジャージに着替える。
ノイズが無いから突然闇に堕ちそうな不安が蝕んでいく。
自分の青写真がマーカーで黒く塗りつぶされている感覚。
焼き立てのハンバーグに揚げたてのエビフライのセット。
ジューッーと音をたてる鉄板が気持ち悪い。
プリプリなはずのエビがモサッと口の中で乾ききり、唾液で融かしてやっと喉が通るくらいのパサパサ感
あまつさえハンバーグは対照的に雨降り後の泥を飲むような柔らかさ。
これ以上箸を進めることは出来ない。
でも母に怪しい思いをされたくない。
意地でハンバーグとエビフライを食べ終え、至高の味だと言わんばかりの作り笑顔で茶を濁した。
縦列に並んだ樹木に降り注ぐ大粒の雨
ガサガサと葉に当たる音がゲームのノイズのようで感情を昂ぶらせる。
ファミレスなんてどうでもいい、家に帰ったらまたゲーム部屋に直行するだけ。
「なに ニヤついてんの?
いいことあった。」
「うん? なにもないよ。」
「そう? この頃変に笑ってる時が多いからどうしたんだろうと思ってね?
気のせいかしらね。」
視線の先には鼻がツンとなるようなきつい香水をつけた 金髪のチャラチャラとしたカップル
〜アイツら 今俺を嘲笑いやがった。
自分がイケメンだからって言い気になりやがって。〜
目の奥の瞳孔まで睨みつける。
カップルはそんな彼を見向きもしない。
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