ゲームスタート

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十三時二十二分 ゲームスタート イヤホンから鼓膜に届くノイズ音がたまらなく快感で、テレビの音量をどんどんと上げる。 レベル九十九 完スト これ以上レベルが挙がることも呪文を覚えることはないのに、物語は進展しない。   農夫 神父 宿屋 全ての人に聞き込みをしても、同じようなことを言うばかり。 しかしそんなイラつきなどどうでも良かった。 セリフを読み進める音とノイズ音のハーモニーが気分を有頂天にさせる。 はじまりの街 最初のダンジョンで主人公が生まれ育った パラレルタウン レベル一だった頃には全くの無音で面白味もなかった。 本当に同じダンジョンなのだろうか BGMが天と地ほどの差がある。 パンッ 肩にのしかかる重み じわじわとやってくる痛み。 振り返ると 母が冷ややかな目で見つめている。 「いい加減にしなさい。 ゲームをしてもいいけど これ以上迷惑をかけるなら 没収するから さぁ ご飯できたから早くきなさい。 全く もう 明日学校なんだから準備ぐらいしなさい。」 まだゲームをしなければいけない。 邪魔をするんじゃねえよ。 終わるまでやらせてくれよ。   パチン! 意識はここで途切れた。 あの後何をしたかも されたかも全くわからない。 目を開くと薄暗い病棟の中へいる。 夜中に一人隔離されて、ゆらゆらと動くカーテンが不気味で、好奇心も恐怖心に支配されて現在地を調べる余裕もなくなった。 このまま眠りにつこう。 そんなときに限って眠りにつくことが出来ない。 ジレンマに襲われて声を上げようという試みは理性によって鎮圧された。 カーテンの隙間からベッドを覗く。 やっぱり誰もいなかった。 テレビもスマホも照明も何にもない。 時間を調べようにも時計すら見当たらない。 自分の境遇がこんなにも不遇だと思ったことはなかった。 〜ゲームがやりたい〜 はやくゲームがやりたい 頭に電流が走る。 片頭痛のような痛みが襲う。 床に倒れ 蹲り もがき そしてパタリと動きが止まる。
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