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悲劇の魔女、フィーネ 16
一体…何が起こっているんだ…?
フィオーネは目を閉じ、柔らかな唇を押し付けている。思わず、その感触に理性を失いそうになり…。
「い…一体何を…す、するんですかっ?!」
寸でのところで自分の衝動を抑え込み、フィオーネの両肩に手を置くと彼女を引き剥がした。
「…」
俺から引き剥がされたフィオーネは悲しげな瞳で見つめて来る。
「い、一体…な、何故お、俺にキ…キスを…?」
顔を真っ赤にさせながらも彼女に尋ねた。
「すみません…もう、こうするしかないのです…貴方は呪いに触れてしまった。このままだと死んでしまいます。私は相手に触れる事によって怨霊の呪いを消す事が出来るのは…ご存知ですよね?」
フィオーネの言葉にカフェでの出来事を思い出した。
「あ…そ、そう言えば…そうでしたね…」
彼女は俺の両手に触れて、怨霊の気配を消してくれた。
「あの時の怨霊と…先程貴方がエレベーターで遭遇した怨霊とではレベルが違いすぎます。彼らは最も恐ろしい怨霊なのです」
「えっ?!気付いていたのですかっ?!」
てっきり気を失っていたと思っていたのに?
「あの時、私の意識はありませんでしたけど…彼等の気配は分りましたから。あの怨霊の血を…貴方は受けましたね?」
「え…?血…?そ、そうだ!俺はエレベーターの中で血を…!」
あの時の光景を思い出すだけで身体が恐怖で震えて来る。しかし、今の自分の身体には血で汚れた後は何所にも残されていない。
すると俺の考えが分ったのか、フィオーネは言った。
「怨霊の血は普通の人には視えないものです。ですが私には視えます。貴方の身体には今も彼らの血が身体に付着しています。怨霊に触れてしまった証拠です。このままでは…間違いなく憑り殺されてしまいますよ?」
フィオーネは顔色一つ変えずに説明する。
「そ、そんな…。い、一体あの怨霊たちは普通の怨霊とどう違うと言うのですか?」
「それは…後程説明します。今は一刻も早く…怨霊たちが最も時間を強める深夜0時になる前に、貴方に憑りついた怨霊を消し去らないといけません。そうしないと私は貴方を助ける事が出来なくなるかもしれません」
「け、消し去るって…ど、どうやって…」
ま、まさか…?
「はい。私と…身体を重ねる事です」
フィオーネは初めてここで顔を少しだけ赤らめさせ、俯いた。
「えっ?!じょ、冗談ですよねっ?!」
予想はしていたが、まさか本当に彼女の口からそんな言葉が飛び出してくるとは思わなかった。
すると、彼女はその言葉をどう受け取ったのか、目を伏せながら言った。
「ええ…そうです。私みたいなのが相手で貴方にとっては不本意かも知れませんが…誰にだって選ぶ権利はあるでしょうし…」
そして悲し気な表情を浮かべる。
何故だ?何故彼女はこんなに自分を卑下するような言い方をするのだ?こんなにも…美しい女性なのに?誰かが彼女の自信を奪うような言動でも取ったのだろうか?
もし、そんな人間がいたとしたら…許せない…!
「何故ですか…?」
気付けば俺は口を開いていた。
「え?」
フィオーネは顔を上げた。
「何故…そんなに自分を卑下するような言い方をするのですっ?!俺は…貴女程美しい女性を今まで見たことなど無かった!」
「ユリウスさ…!」
俺はフィオーネの腕を掴んで引き寄せると、力強く抱きしめて無言で唇を強く重ねた。そしてそのまま彼女をベッドに押し倒すと言った。
「いいんですね…?先に言い出したのは貴女だ…」
「は、はい…」
フィオーネは顔を真っ赤にしながらも、頷いた。
「フィオーネ…」
俺は彼女の着ている服に手を掛けた―。
****
薄暗い部屋の中で、彼女の白い肌に口付けしながら何度も身体を重ねた。
そしてフィオーネは身体を震わせながらも、必死になって俺にしがみついて来る。
そんな彼女が愛しくてたまらなかった。
俺はフィオーネを抱きながら…彼女を愛してしまったことに気付くのだった―。
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