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悲劇の魔女、フィーネ 20
青ざめるフィオーネの肩を抱えるように501号室の部屋に辿り着くと、すぐに彼女をベッドに寝かせた。
「大丈夫か?フィオーネ」
愛しい恋人の髪にそっと触れる。
「ユリウスさん…。ごめんなさい…騒ぎを起こしてしまって…」
フィオーネは青ざめた顔で謝罪してきた。
「何故謝るんだ?それにしても…失礼な老人だ。君の事を魔女だとは…。アドラー城の話は真実かもしれないが、フィーネが魔女だと言う話を信じているなんて。第一君を魔女と言ったことは許せない」
彼女の美しい黒髪を指ですきながら俺はフィオーネを見つめた。
「…」
フィオーネは青く美しい瞳で、少しの間俺を見つめていたが…やがて口を開いた。
「ユリウスさん…。私、疲れたので少し…寝ますね?ユリウスさんも休んだ方がいいですよ?今夜はアドラー城跡地へ行くのですから」
フィオーネの言葉に俺は戸惑った。
機材は無駄になるけれども、俺はもうあの城跡地に行く気は無かったからだ。
「え?あ…そうか、やはり行かないと駄目なのか…?」
「ええ。…行かないのですか?」
フィオーネはじっと俺を見つめる。
「あ、いや…そう言う訳では無いんだが…てっきり、フィオーネが俺に憑りついている怨霊を払ってくれたとばかり思っていたから」
するとフィオーネは首を振った。
「いえ、まだ完全ではありません。今夜…あの城へ行き、全てを終わらせるつもりです。あの城が呪われた大元を断ち切ります」
「そんな事が出来るのか?」
その言葉に目が丸くなる。
「はい、出来ます。しかも…今夜が一番最適なのです」
フィオーネはじっと俺を見つめる。その目には決意が見えた。
「分った、君の言う通りにしよう」
「でしたら…ユリウスさんも横になったほうがいいです」
「あ、ああ。それじゃ」
この部屋はシングル用だから生憎ベッドは一つしかない。
「俺はこのソファで休むよ」
そしてソファに移動しようとしたところ…。
「…行かないで下さい」
フィオーネに服の袖を掴まれた。
「え?」
「一緒に…隣で寝てくれますか…?」
フィオーネの身体は…何故か小刻みに震えている。
「え…?けれど…」
身体を休めろと言われているのに、フィオーネの隣で寝ようものなら俺の理性が持つはずが無い。きっとまた激しく彼女の身体を求めてしまうに決まっている。
「あ…それはまずいんだ…」
「何故ですか…?」
「フィオーネの隣で寝ようものなら、又君の身体を求めてしまうからな。だから離れていたほうがいいんだ」
するとフィオーネは驚きの言葉を口にした。
「…それでもいいです。…1人にされるよりはずっと…お願いです。傍にいて下さい…」
「!フィオーネ…!」
愛する女性からこんな事を言われれば、大抵の者は理性など吹き飛ぶだろう。
俺はベッドに横たわるとすぐにフィオーネを抱きしめ、甘い唇を奪い…そのまま彼女の服に手をかけた―。
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