悲劇の魔女、フィーネ 24

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悲劇の魔女、フィーネ 24

「う…」  眩しい朝日が顔に当たり、目が覚めた。気付けばいつの間にか朝になり、太陽の光が辺りを明るく照らしている。 「そ、そんな…いつの間にか朝になっているっ?!」 まさか…俺は朝まで目が覚めなかったのだろうか…?いや、それ以上にもっと衝撃的な事実がある。 「う、嘘だろう…?し、城が消えている…」 そんな馬鹿な。 俺は確かに昨夜、ここで300年前に炎で焼け落ちたはずのアドラー城をこの目で見たはずだ。 「え?」 そこで重要な事に気付いた。 「俺は…何で夜にここへ来たんだっけ…?」 色々な人物から夜は危険なので絶対にアドラー城跡地に近付いてはならないと言われていたのに…何故俺は危険を冒してまた1人でここへ来たんだ? 「1人…?」 いや、本当に1人だったのだろうか?誰かが…俺の傍にいたような気がする。それが誰だったのか、少しも思い出せないのがもどかしくてたまらない。 その時、定点観測用カメラを仕掛けておいたことを思い出した。 「そうだな…折角ここまで来たんだ…。持って帰ることにするか」 車から降りた時にふと気づいた。 「そう言えば…この間初めてこの場所を訪れた時は不気味な雰囲気が漂っていたのに…」 何故だろう?今は清々しい風が吹き、眼前に広がる巨大な湖は太陽の光を反射して、キラキラと輝いている。 ここは…とても美しい場所だと思った。 「きっと、湖面を背景にそびえ立つアドラー城は…さぞかし美しかっただろうな」 そして俺は4台の定点観測用カメラを回収する為に向かった。 **** 「おかしいな…」 定点観測用カメラをおいた場所が自分が最初に置いた場所とかなりずれていた。お陰で全てのカメラを回収するのに時間がかかってしまった。 「何でこんな場所に移動しているんだ…?」 幾ら首を捻っても分るはずは無い。 「まぁ、いいか。カメラは無事回収したし…。それにしても今回も収穫はゼロだったか…。仕方ない、また別のミステリースポットを探しに旅に出よう」 そして、最後にもう一度最後にアドラー城跡地を振り返った。 「ん?」 俺は一瞬目を凝らした。そこに長い黒髪の女性が1人、立っている姿が一瞬見えたからだ。彼女はこちらをじっと見つめている…様に見えた。 慌てて目をゴシゴシ擦り、もう一度その場所を見てみる。するとそこには1本の細い枯れ木が立っていた。 「何だ…見間違いか…」 そうだよな…この辺り一帯は集落も無いし、オカルトスポットとして有名な場所で滅多に人なんか来るような場所では無いのだから。 「帰るか」 そして車に乗り込むと、シートベルトを締めてエンジンを掛けた―。 ****    レンタカーも返し、ホテルに戻った俺は帰り支度をしていた。もうこの場所には用が無い。 あのアドラー城跡地はオカルトスポットになるような場所では無いと感じたからだ。 「あんなに美しい光景が見える場所はもっと設備を整えて、湖の美しい観光スポットにするべきだな。本当に勿体ないものだ」 独り言を言いながら荷作りをしていると、スマホが鳴った。見ると着信相手は俺にこの場所を教えて来た仲間のデイブだった。 「もしもし?」 『もしもし!ユリウスッ!お前…まだ無事だったんだなっ?!』 切羽詰まったデイブの声が聞こえる。 「何言ってるんだ?当然だろう?大体な、今日もう一度アドラー城跡地へ行ってみたが、なーんにもおかしなところは無かったぞ?それどころかロケーションが素晴らしくて最高だった」 『え?そうなのか?そう言えば…お前、何だか随分明るくなったな?』 「ああ、そうだろう?不思議な事にあの場所に行ってから…何だか妙に身体が軽いんだ。あそこはひょっとするとパワースポットになるかもしれないぞ?」 『…まぁ…お前がそう言うなら、別に俺は構わないが…あ、でも何ともなかったなら、次の情報を教えてやろうか?』 「何?まだ何かいいネタがあるのか?教えてくれ」 『ああ、そこはな…』 俺はデイブの話を聞きながらメモを取り続けた―。
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