エピソード1 おパンツの行方 4

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「桃さーん、お好み焼きにキムチ入れていいっすか?」 「うん。いっぱい入れて」  どうやら石山は身体に似合わず手際はいいらしい。結愛は手持ち無沙汰で石山に手伝いを申し入れたが断られた。仕方なく桃のそばに戻る。だが猫とルンバが走り回っているので、仕方なく壁にもたれて座った──はずだった。急に後ろからガタンと大きな音がした。慌てて振り向くと、クローゼットの扉が外れそうになって傾いていた。 「ごめんなさいっ!」結愛は慌てて立ち上がって、扉を押さえた。すぐに石山がやって来た。 「──桃さん。だからいい加減に扉を修理しましょうって言ってたじゃないすか」 「うん、ごめん。直しといて」  桃は集中しているせいか返事もどこか上の空だった。 「コイツに中を見られますよ?」 「別にいい」  石山はため息をつきながら傾いた扉を開けた。「危ねえから外すぞ」と石山は言った。結愛はそっと中を覗いた。  クローゼットの中は物がぎっしり詰まっていたものの、綺麗に整頓されていた。だが不思議なことに一部の棚だけ荷物が置かれておらず、写真が飾られていた。結愛はその写真をマジマジと眺めた。桃の彼氏だろうか。 「──うん?」その写真に写っていたのは、どこをどう見ても毎日見る顔であった。結愛は手に取って凝視した。 「ああ。それ桃さんの推しメン。香川さん」  うん。それはそうなんだけど。香川の爽やかな笑顔のアップの写真だった。何故か後ろに小さくピースした青塚も映り込んでいたが。 「推しメン」 「だそうだ。香川さんの家の壁になりたいって」  そこは壁じゃなくて普通に遊びに来たらいいのではないだろうか? 結愛は首を傾げた。  クローゼットの扉はどこからか工具を持ってきた石山によって修理された。器用な人だなと結愛は思った。  結愛は壁にもたれるて座ってるのもなんだなと思って、逆に猫とルンバを追いかけて写真を撮ることにした。それは意外と楽しいことだった。いつの間にか石山と同じような格好をして撮っていた。最後にはルンバは定位置に戻り、猫はその隣に寄り添うように丸まって眠っていた。
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