エピソード1 おパンツの行方 4

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 食べ終わって片付けを手伝っていると、結愛のスマホが震えた気がした。そういえばここに来てからスマホは確認していなかった。石山にことわってスマホを確認する。 「──ゲッ」 「どうした?」 「電話する」  結愛のスマホには鬼のように香川からの着信があった。須美には桃の家に行ってること、夕飯はいらないということ、遅くなるということは伝えてあった。だが気が付いたら日付が変わりそうな時間だった。  結愛は慌てて電話をかけた。 『いまどこにいる?』コール音ゼロという勢いで繋がった。 「遅くなってごめんなさい」 『うん。質問に答えなさい。どこにいるのかな?』 「桃さんの家」 『確か吉野町だったね。五分で行くから用意しといて』 「え? 五分って……」そう聞き返したが、電話はすでに切れていた。自宅からここまで車といえど五分では辿り着かない。いったいどこにいたんだろう? 「五分で迎えに来るって……」  結愛がそう答えると二つの悲鳴が聞こえた。 「おや。男の子がいるなんて聞いてなかったけど?」  車から顔を出した香川は確かににこやかだった。にこやかだったが──目は笑ってはいなかった。 「推しが……推しが……ナマ推し……」  桃は全く使いものにならない。だから仕方なく一緒に降りてきたのだが。石山は心の中で舌打ちをした。 「二人の用心棒みたいなモンっす」 「あと料理係」結愛が付け加えた。  ほー。香川は抑揚のない声で言った。 「変なものでも盛られてなきゃいいけど」 「そんなことしたら龍さんに殺されます」 「それはまた物騒な」 「ちゃんとわきまえてるンで」  香川は結愛に助手席に乗るように言った。そしてすぐに車を発進させた。  結愛は手を振っていたし、桃もずっと手を振っていた。 「ここに墓をたてたい……」 「バカ言ってンじゃねえわ」  こっちは冷や汗が止まらなかったっつうの。石山はやっとゆっくりと息をはいた。
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