エピソード2 この猫 猫の子 猫の子 子猫 1

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 その男の子は近くの小学校の四年生で、陽太(はるた)と名乗った。どうやら最近この公園で不穏なことがあったらしい。 「隣のおばさ……おねえさんが犬を飼ってて。母さんと立ち話してるのを聞いたんだ。」  最近この公園で不自然に食べ物が落ちていて、それを口にした犬が具合が悪くなって病院に運ばれたそうだ。 「食べ物に毒が入ってたみたい。毒の量は少しで、その犬は中型犬だから助かったって。だから犬というより猫を狙ったんじゃないかっておば……おねえさんが」  そうか。だからいつもはもっと犬の散歩で訪れる人が多いはずなのに、今日はほとんど見かけなかったのは。たまたまだと思っていたけれど、どうやらそうではないらしい。  けれどここに住み着いていたはずの猫はどうしたのだろうか? 「猫は保護団体の人が捕まえてた。死んじゃったら大変だからって」 「え!?」 「全部じゃないけど、ほとんどは捕まえたって言ってた」 「マジで!?」  それは結愛にとってちょっと困ったことであった。最近ではなかなか公園に住んでる猫がいないのだ。やっと見つけたこの公園。それなのに。 「──許せない。犯人は絶対捕まえてやる」 「じっちゃんの名にかけて?」 「爺ちゃんはいないよ」 「そうじゃないよ」陽太は呆れたように結愛を見ながら肩をすくめた。「探偵のくせに知らないの?」 「知らない」 「駄目だなぁ、そんなんじゃ。だから〈助手〉なんだよ。仕方ないから僕も手伝ってあげるよ」 「小学生に助けてもらわなくてもいい」 「〈少年探偵団〉とか知らないの!?」 「団っていっても一人じゃん」 「そっちが助手なんだから、少年探偵団が一人だって問題ないだろ!」陽太はちょっと恥ずかしかったのだろうか大きな声を出した。  結愛はこの辺りのことはあまり詳しくない。だったら地元の小学生なら何か役に立つかもしれない。 「私は香川結愛。よろしく、少年探偵団の陽太くん」 「おう! 犯人捕まえてやろうぜ、結愛!」  そこは名前呼びなんだな。結愛は握手のために手を差し出した。陽太は「High five!」と言いながら結愛の手をパチンと叩いて喜んでいた。  なるほど、High five世代なんだなと結愛は苦笑した。
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