エピソード2 この猫 猫の子 猫の子 子猫 1

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**  陽太と会った次の日、結愛はいつものように事務所でパソコン作業をしていた。突然スマホが震えた。陽太からだった。結愛は慌てて出た。 『おい、結愛! 今日は公園に来ねえのかよ!』  約束などしてただろうか? 結愛は首を傾げた。 『隣のおば……おねえさんにお願いして、これからゲンバケンショーってやつをやるんだぞ!』  陽太は怒ってるのか自慢しているのか大きな声で結愛に言った。だがそれは願ってもない話だ。 「いまからすぐ行く」  結愛はそう言って電話を切った。そして慌ててリュックを背負った。 「おじさん。現場検証に行ってくる」 「おう。いってらー」  結愛は走って部屋から飛び出して行った。  寝ぼけてた青塚の頭がだんだんクリアになってくる。いま〈現場検証〉って言ったか? 「お、おい! 結愛? 結愛ッーーー!」  青塚は大声で叫んだが、聞こえてるはずもなかった。  結愛が公園に行くと陽太と年配の女性が話をしていた。 「陽太くん!」結愛は声をかけて走って行った。陽太も結愛に気がついて手を振った。  結愛は二人のもとに辿りつくと、頭を下げた。 「あら、陽太くんが言ってた探偵さんってあなた?」犬を抱いていた年配の女性が言った。 「はい。香川結愛といいます」 「若い女性が探偵なんて珍しいわね」 「正確には〈探偵の助手〉です」 「あら、そうなの? ヘイスティングスってわけね」  結愛はそう言われてすぐには思い出せなかった。どこかで聞いたような。とりあえず笑って誤魔化すことにした。 「このへんに撒かれていたの」  女性はベンチ裏の草むらを指さした。結愛はメモ帳とペンを持って女性の話を書きとっていた。  草は結構な高さまで生えていて、なかなかに気がつきにくい場所だった。 「よく気がつきましたね」 「うちのチャッピーちゃんは食いしん坊なの。本当ならそんな草むらには入れたくないのよ、今の時期だとダニとかついちゃうから。でも食べ物があるとわかるとそりゃあ凄い力で引っ張っていくのよ」 「なるほど」  結愛は女性の抱いてる犬を見た。この犬の種類はパグだっただろうか。今も鼻をフガフガと鳴らしていた。 「で、チャッピーちゃんは食べなかったんですか?」 「基本的に拾い食いはさせないようにしてるの。食べちゃうこともあるけど。今回は先に気がついたから食べなくて済んだってわけ」 「気がついてよかったですね」  チャッピーはそれには抗議するとでもいうように、余計に鼻を鳴らした。 「それはドッグフードみたいなものでしたか?」  結愛がそう尋ねると、女性は「そうねえ」と思い出すように頬に手を当てた。 「思い出してみたら、猫用のドライフードみたいな感じだったわね。三色混ざったものとかあるでしょう?」  結愛は首を傾げた。猫用のフードにはあまり詳しくない。それで女性に詳しく聞いてみた。それは色によって味が違っていて、それが混ざっているものらしかった。犬用もなくはないらしいのだが、猫用の方が圧倒的に多いらしい。 「緑色のが野菜で、色の濃い茶色がマグロで、薄い茶色が舌平目のやつとか」  なんだ、それは。えらく豪勢じゃないか。 「猫ちゃんは飽きちゃうからねえ、同じ味だと」 「そういうものなんですか?」 「そうよ。気に入らないと食べないから。犬はあんまりそんなことないわね。チャッピーちゃんだって出されたものは食べるから」 「好き嫌いないのは偉いね」結愛はチャッピーにそう話しかけた。チャッピーは嬉しそうに舌を出して笑ったような顔をした。どうやら誉められたことは理解しているようだった。
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