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プロローグ
僕は、いつだって1人だった。
みんなが保育園にいるときも、小学校にいるときも、家の中でだって。
どうして僕だったんだろう?もっと知らない誰かで良かったじゃないか。ずっとそんな問答を繰り返してきた僕は、いつからか心身共に疲れていたのだろう。
そんな僕の壊れかけの精神がついに崩れ落ちてしまったのはいつだったか。
とても昔の出来事だったような気もする。
確かあの時は1種の恐怖を感じるほどの豪雨だった。上空を覆い尽くす曇天、薄暗い廊下の電気にいちいちビックリして飛び上がっていたような。そんな昔の出来事だった。
その当時の僕は俗に言ういじめられっ子というやつで、顔に水をかけられたり机に悪口を書かれるのは日常茶飯事だった。
そう、日常茶飯事だったのだ。適応能力にだけなら自信があった当時の僕はもう慣れたのだと思い上がっていた。今思うとそれが間違いだったのだろう。
「お〜い、ーーーー。お前いっつも辛気臭い顔してんなぁ!」
「今のこの天気にゃあお似合いじゃねぇか!ギャーッハッハッハッ!」
いつも通り、いつも通り。
いつも、通り…?
もう、限界だったのだろう。今までは避けてきたのに。避け続けてこれたのに。
「お前ら…何なんだよ!」
「こんなところ、もう居られるか!」
口をついて出た声は、果たして僕のものだったのだろうか。
どれだけ、走ったのだろう。
どんな大口を叩こうとも多勢に無勢。僕は無様に逃げ出すしかなかった。土砂降りの雨の中、走って、走って。辿り着いた先はーーーーー
行き止まり。
もう、為す術もなかった。誰か助けてと声をあげようとしても、走り疲れ乾ききった喉では叶わない。
あぁ、僕、死ぬんだな。
あの時の僕はほんとに死ぬのだと思っていたし、なんなら受け入れていたのだと思う。でも、今なお思考するこの頭があるのは、
「そこのキミ!早くついてきて!」
雨でぐしょぐしょになっていても魅力的な、翡翠色の髪色をしていたあの人のおかげだ。
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