#01. 同じ幸せを共有しています。

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#01. 同じ幸せを共有しています。

「タクってば。いつから、わたしのことが、気になっていたの?」 「最初からだよばーか」 「……最初からって……」然るべき建物で一旦愛を確かめ合ったあと。例の、花見町のボートに乗っている。一緒にボートに乗るカップルが結ばれるというあれね。よどみない手つきでオールを漕ぐ拓己さんを見ながら、わたしは、 「緑川総合病院の前で見かけたあのときから?」 「決まってんだろ」うお。デレてる。デレとるわ拓己。「なんか……めっちゃ可愛い子が、炎天下の中、放置されてるから、……どうしようかなと。それで、ああした」  へー。「顔に惚れたんだ?」 「馬鹿。中身にも決まってんだろが。だいたいおまえ、……気づくのがおっせえんだよ。おれは、三年前に、おまえが、入社したときから気づいていた。いつまで待たせんだこんにゃろ、って思ってたんだよ」  強がりを言う拓己さん。……分かってる。わたしが職場に慣れて、自信が出来るタイミングを狙ってたんだよね。うんうん分かってるよ。
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