#02. 新婚ごっこ

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#02. 新婚ごっこ

 花見町の街で愛を確かめ合い、それから、花見町散策を堪能し、それから、拓己さんの住むマンションへと移動する。 「疲れてるだろう?」エプロンを締める姿が尊い。ぱぱっと腰の後ろでエプロンの紐を結び、「あるもんでちゃちゃっとなんか作ってやっから。おまえは寝てな」  えー。「……拓己さん……手伝いたい、です……」 「こら」するり、と、ごく自然にわたしの膝と背中の下にそれぞれ手を回し、ふわ、と自分のからだが浮く。……ナチュラルにお姫様抱っこしてくださるの、やめてくれません? 心臓に毒。「おっまえいまは興奮状態だろうけど……、すっげ、ねっみぃ顔してっから……寝ろ」  すいすいと廊下を抜け、寝室でやさしく寝かされる。勘違いしそうなくらいにやさしく。  わたしのおでこにかかった前髪をのけると彼は口づけた。「――おやすみ。おれの、お姫様」……  拓己さんは魔法使いなのだろうか。吸い込まれるように意識が遠くなっていった。  * * * 「……喉、乾いた……」  むくり、と身を起こす。くんくんくん。拓己さんのベッド、なんか、いい香りがするなぁ……改めて嗅いでみて気づいた。う。
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