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Track 1 :When you wish upon a star
夜の街に響くパンプスの音が星の見えない空に吸い込まれていく。
立ち並ぶビルから零れる無機質な蛍光灯の灯りはこの街の人たちの心の様で、見渡せばどこにでも光が溢れているのに、誰のことも照らしている様には見えなかった。
疲れた足を惰性で動かしながら帰路に着く。
何も考えられない程に消耗する毎日。
たまの休みくらい気分転換をしようと思うのに、起きれば夕方だということもままある。
私、七星 美輝は現在22歳。
大学を卒業して就職したIT会社は世に言うブラック企業で、入社して2ヶ月だと言うのに毎日辞めることばかり考えている。
小さい頃は毎日ピアノの鍵盤に向かっていたのに、今ではパソコンのキーボードに向かう日々。
カシャカシャと鳴る音が私の耳に染み付いていて、ベッドの上ですら時々聞こえる時がある。
梅雨の近づいてきた金曜日の不快な空にため息をつく。
道路を走る車の音、アスファルトが奏でる雑踏、知らない誰かの話し声。
何故だか急に息が詰まりそうになって苦しくて、私は酸素を吸い込みたくて雑居ビルの角を曲がってすぐにしゃがみ込んだ。
枯れた花がそのままになったプランターに肘がぶつかり、その衝撃で涙がこぼれる。
この街の人々は、誰かが片隅で泣いていても誰も気がつかない。
大通りから聞こえる冷たい音だけがビルの壁に反射していく。
この土日は珍しく案件を抱えていない休日だというのに、一度座り込んでしまうと立ち上がることができなかった。
このまま私もここから動かずに枯れていってしまえばいいのに。
ジャケットからスマホを取り出しても誰からの連絡も入っておらず、ただ地元の海の写真が私の動きを認識して明るくなる。
顔認証がついているのに、泣き顔ではロックは解けない。
笑顔だけを認識するというなら、今の私は私ではないのだろうか。
泣き顔で必死に笑顔を作って電車の時間を確認しようと思った時、街の喧騒にかき消されそうな小さな鈴の音と、ピアノの音が聞こえた。
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