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「確認してくる」岩川はトビ口を脇に抱え、現場確へ向かった。  途中、野次馬たちがスマホで火災現場を撮影しているのが目に付いた。はっきり言って邪魔だ。他人の不幸は蜜の味と言うが、まさにそうなのだろう。何のために撮影をするのか。そんな暇があるのなら、バケツリレーでもしてくれたほうが、人が寄ってくるという意味でははるかに気持ちいい。  ま、こちらとしてはいちいち気にしていたら仕事にならない。ただ、転倒したとかぶつかったとかで怪我をされ、余計な仕事が増えるのは困る。  火災建物に一歩づつ近づくたびに焦げくさい臭気が鼻をついた。黒煙と白煙とが入り交じり、熱気を伴って岩川の前に立ちはだかる。まとわりつく。喉がむずがゆくなり思わず咳きこむ。空気呼吸器を着装してはいるが、これしきのことでマスクを着けるわけにもいかない。岩川は、さらに奥へと足を踏み入れた。  耳を澄ませば木の弾ける音が時折聞こえる。 「そっちはいいからこっちに対応しろっ」 「早く水を出せっ」 「梯子はかけたのかあっ」  怒号のような声が飛び交っている。  岩川は声をかいくぐり、火災現場の状況を把握しようと努めた。
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