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「えっと、でも俺、着替えとか持ってないし」
「あ、そんなこともあろうかとさっき寄ったコンビニで買っておいたよ!」
ジャン!と言いながら香菜がエコバッグから取りだしたのは、紳士ものの白いTシャツとグレーのボクサーパンツ。
「せっかく来てくれたんだから、寛いでいきなよ!」
せめてものおもてなしだ、そんな事を言われてしまえばお言葉に甘えるしか他がない。シャワーを浴びて、下着だけという心許無い姿で風呂場から出ると、創は勧められるままに香菜の隣のソファに座るのだった。
「それじゃ先ずはカンパーイ!」
ローテーブルに出された缶ビールと乾きものをつまみ始めれば、鑑賞会がいよいよ始まる。
『いやっ!急にどうしたの?』
『先輩、俺、先輩が好きなんです!だから……』
画面の中では職場の華と称される主人公が、後輩との二人きりの残業中、突如ガバリと抱きしめられたかと思うとそのままデスクへ押し倒されている。
制服のタイトスカートは捲し上げられ、レースのショーツが露わとなっている。太ももを擦り合わせて防御しようとするものの、それがかえって煽情的。そして男は狩り立たせられた情欲のままにストッキングを引き裂くと、その繊細な布地の中へと手を滑り込ませていくのだった。
――この導入部を自宅で何度も見ているというのに、今更ながら創は「あれ?」と気がついた。
(そういやエロにたどり着くまでの、このシチュエーションって、いつもの俺と先輩そのものなんじゃねえの??)
少し偉そうだけれど可愛いらしい先輩と、そんな彼女に頭が上がらない後輩。男と女、深夜のオフィスに二人きり。
一度意識をし始めれば、何もかもが自分たちを模している様な気がしてくる。
毎夜のような残業時間。先輩役の女優の、セミロングの髪を艶かしくも誘うようにゆっくり耳にかけるその仕草。しまいには気紛れな猫の様に目尻の上がった瞳をした女優の顔までも、なんとなく先輩に似ているような気さえしてしまう。
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