1-1 青年、化けものを拾う

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 道が真っ暗になると、化けものは進むのに躊躇を見せた。私はかまわず進んだ。静かな道に、私ひとりの足音が響く。  振り返ると、化けものとの間に距離が開きはじめている。  化けものは足を止め、首を巡らせていた。なにか迷っているかのようだ。私に着いていくか、そこを考えているのだろうか。  しばらくそうしていた化けものは、意を決したのか、止めていた足を動かしはじめた。  ぬかるみをゆき水音を立て、私を追ってくる。  そこから私の家まですぐだ。軒にヒカリゴケを植えてあるため、遠目にも目印のようになっている。視界に認めると、なんだかほっとする光景だ。  建てつけの悪い玄関の引き戸を開け、私は化けものになかをしめした。  化けものはおずおずと玄関に入り、私もそうする。  私は玄関からおもてに顔を出し、やってきた道を一瞥した。  私が化けものと歩くところから見ていただろう、夜道にいくつかの白い顔――龍虫が浮かび上がっている。  雨のときに現れるものだが、雨は上がりあれらは消える頃合いだった。まるで化けものと私を見送るようだ。あれらは警邏を呼ばないし、告げ口もしない。  私は離れに明かりがついていないことも確認した。ずっとにぎっていた傘を置き、三和土で手を二度鳴らして家の明かりをつける。  化けものは声を上げた。  そのか弱い鳴き声は、驚きをはらんでいるように私には聞こえた。  化けものは自分の両手を見、次いで天井の明かりを見る。
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