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その様子になんだか得意な気分になって、私はまた手を二度鳴らす。明かりは消え、家は暗くなった。ふたたび手を鳴らして明るくなると、化けものはきょろきょろと廊下を見回していた。
爪先にはめていた蹄鉄を玄関に落とし、私は廊下を進んだ。
もう当たり前のように化けものは着いてきている。私との距離が開くのをきらうような歩調だ。
茶の間へのふすまを開け、なかを指差すと化けものはそこに入った。
私は流しに向かう。
飯びつに残っていた白米を茶碗に盛り、干物や漬けものを適当に皿に並べ、茶の間に取って返した。
私が食べるものを化けものも食べるのか確信はない。
茶の間では座布団を抱えるようにし、化けものは横たわっていた。
眠っているのか――化けものも眠るのか。
私たちが立てるような寝息を立てている。
化けものは色々と私たちと違うようにも見えるが、かたちは違えど衣類を身に着けているし、態度からして生活様式もほとんど変わらないのではないだろうか。目の前でそうやって眠った姿を見て、急に私は安心していた。
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