1-1 青年、化けものを拾う

4/6
前へ
/199ページ
次へ
 私は急須をかたむけ、すっかり冷たくなった茶を湯飲みに注いだ。朝に支度して、そのままにしていたものである。  化けものの衣類は変わったかたちをしているが、見ているうちに私たちの身に着けるものと大差ない気がしてきた。  印象からしてそれは女児と思しきものだが、私は化けものの顔の判別に自信が持てなかった。  これは雄なのか雌なのか。  おとななのか、子供なのか。  いまはちいさいが、大きくなったりするのか。  食事は済ませており、とくに腹は減っていないものの、私は手持ち無沙汰に漬けものをかじる。  同僚が分けてくれた漬けものだ。うまい。なにか食べたら、化けものもうまいと感じるのか。 「年齢も性別も、もしかしたらないかもしれないなぁ」  つぶやきに、化けものが目を覚ますことはなかった。  自分たちの尺度で測ろうとするのは、危険かもしれない。私たちの持つ枠組みにはめれば、きっと安心できる。理解の及ぶものだと、そう思えるだろう。  だが勝手に安心しているうちに、途方もないなにかに変化してしまうかもしれない――おなじ部屋にいることが耐えられないほどの、異様なものに。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加