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私は急須をかたむけ、すっかり冷たくなった茶を湯飲みに注いだ。朝に支度して、そのままにしていたものである。
化けものの衣類は変わったかたちをしているが、見ているうちに私たちの身に着けるものと大差ない気がしてきた。
印象からしてそれは女児と思しきものだが、私は化けものの顔の判別に自信が持てなかった。
これは雄なのか雌なのか。
おとななのか、子供なのか。
いまはちいさいが、大きくなったりするのか。
食事は済ませており、とくに腹は減っていないものの、私は手持ち無沙汰に漬けものをかじる。
同僚が分けてくれた漬けものだ。うまい。なにか食べたら、化けものもうまいと感じるのか。
「年齢も性別も、もしかしたらないかもしれないなぁ」
つぶやきに、化けものが目を覚ますことはなかった。
自分たちの尺度で測ろうとするのは、危険かもしれない。私たちの持つ枠組みにはめれば、きっと安心できる。理解の及ぶものだと、そう思えるだろう。
だが勝手に安心しているうちに、途方もないなにかに変化してしまうかもしれない――おなじ部屋にいることが耐えられないほどの、異様なものに。
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