1-1 青年、化けものを拾う

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 化けものというのは、眠ると熱を発するのだろうか。ついさっき家に上がったときより、顔のあたりも赤くなっているようだ。 「これは冬場にいいなぁ」  冬までこの化けものが私のもとにいるのか不明だが、湯たんぽのように抱えて眠るところを想像した。  重宝しそうだ。  声を出さずに笑ってから、私は立ち上がって隣室へのふすまに手をかけた。  となりは寝室を兼ねた私室であり、書棚と万年床が延べてある。  万年床の横に来客用の布団を敷く。  丁重にもてなす来客はこれといってなく、郷里の両親が訪れたときくらいにしか使っていない。ここ数年しまったきりになっていたものだ。  いくら化けもの相手とはいえ、そのへんに転がしておくのはどうにもすっきりしない。抱え上げても起きない化けものを運んで寝かせ、私もとなりの万年床に潜りこんだ。
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